米国や中国を中心に開発が加速する人型ロボット(ヒューマノイド)。建設業をターゲットに開発を進める企業も現れた。未来の建設現場では、人とヒューマノイドが混在して働くことになるのか。足元の実力と、可能性を探った。
「被災状況の調査を開始します」。こう声を発し、高さ約130cmの人型ロボットが、ぎこちない足取りで歩き出した。周囲を見渡すように首を回し、小刻みに体を揺らしながら建物内を進んでいく。やがて1本の柱の前で、ぴたりと立ち止まった。
ゴーグル型デバイスを装着した操作者が、「建物の被害状況はどうですか」とマイクに話しかける。すると人型ロボットは柱に腕を伸ばして損傷箇所を認識し、「傾きが30分の1以上あるようです」と報告した──。
これは、建築研究所(以下、建研)などが2026年3月10日に公開した実験の1コマだ。建研とロボット向けアプリ開発などを手掛けるポケット・クエリーズ(東京・新宿)が、災害時の応急危険度判定などの遠隔化を狙って実施した〔写真1〕。
両者は、人型ロボットによる被災建築物の遠隔調査システムや、人型ロボットと4足歩行ロボットの連係システムの開発を進めている。
実験では、傾いた壁や損傷した柱などの被害の確認を想定。被災建築物を模した環境を屋内に設け、人型ロボットが柱の傾斜角を報告する様子を実演した。カメラで撮影した損傷を基に、AI(人工知能)を使って被害状況を分析し、傾斜角の他、沈下量や変形量などを判断して結果を点検帳票に入力する。
実験を担当した建研材料研究グループの宮内博之上席研究員は、「人間が使う道具や機械を、そのまま扱える点が人型ロボットのメリットだ」と説明する〔写真2〕。「技術的には黎明(れいめい)期で、まだ人間の能力には到底及ばない。今ようやくスタート地点に立ったところだ」(宮内上席研究員)。両者は30年ごろに人型ロボットを災害現場へ適用する目標を掲げ、開発を続ける。
国交省もフィジカルAIに注目
カメラやセンサーなどの情報を基に現実世界を認識・理解し、自律的に行動できる「フィジカルAI」の進化に伴って、人型ロボットへの注目度は急速に高まっている。26年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」の会場には、衣類を折り畳んだり、人間と卓球をしたりする多彩な人型ロボットが集結した。
こうした人型ロボットは、まずは製造業や物流業などでの活用が進むと見られるが、担い手不足に悩む建設業もターゲットの1つだ。
日本建設業連合会が25年7月に発表した長期ビジョン2.0では、25年度に299万人いた技能者が、10年後の35年度に264万人まで減ると予測した。現場の抜本的な生産性向上は避けて通れない課題。人型ロボットが活躍する余地は十分にある。
国土交通省もフィジカルAIに注目する。26年3月17日には建設分野でのフィジカルAI活用をテーマにピッチイベントを開催。建設会社や建設コンサルタント会社など計104団体が参加する盛況ぶりだった。
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