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ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2026年4月30日、AIが企業のビジネス戦略に与える影響に関する調査結果を発表した。
同調査によると、AIによって「企業能力(編注1)に中程度以上の変革が求められる」と回答したCEOは80%に上る。この背景として、企業活動の焦点が従来のデジタルビジネスから「自律型ビジネス」(編注2)に移行しつつある点を同社は指摘した。
自律型ビジネスへの移行は効率化と競争力向上をもたらす一方で、既存の収益基盤を揺るがす要素にもなり得る。
一方で、一部のCEOはAIが自社の利益モデルに悪影響を及ぼすと予想している。今回の調査では、28%のCEOがAIがもたらす最大のリスクとして「収益」を挙げた。この背景に何があるのか。
(編注1)企業能力とは、目標を達成するために実行する力や顧客への価値提供を支える組織力を指す。
(編注2)自律型ビジネスとは、AIの活用により、ビジネスプロセスや意思決定が人間の介入なしに完結する体制を指す。
28%が収益リスクと回答 その背景にあるものは
収益が最大リスクとして挙がる背景にあるのは、AIエージェントが既存の仲介システムや、リアルタイムでの価格設定・交渉プロセスを迂回(うかい)することで、既存の収益モデルが危機にさらされるという見方だ。
仲介や取引手数料に依存してきたビジネスほど、AIエージェントによる自動化の影響を受けやすい。AIによって取引型の収益構造が揺らぐ可能性を、CEOの約3割が懸念している。
同調査では、AIによる自動化や自律型能力の導入状況と、今後の予想についても調査している。54%のCEOが「特定タスクへの限定的な導入にとどまる」と回答した一方で、「2028年末までこの状態が続く」と予想したCEOは13%にとどまる。
今後については、「人間の意思決定を支援する自己学習型のAIツールを導入する予定」と回答したCEOが32%、「人間の介入をほぼ必要とせずに組織が運営されるようになる」と予想したCEOは27%に達した。
一方で、AIが顧客基盤に与える影響については、「AIによって顧客基盤に大きな変化が生じる」と予想したCEOは17%にとどまり、「限定的」との見方が多数を占めた。多くのCEOは、既存顧客との関係深化や、マシン・カスタマー(編注3)との関係強化にAIを活用する姿勢を示している。
ガートナーは、急成長するマシン・カスタマー市場へのアクセスを目的とした専任事業部門や販売チャネルを持つ大企業の数が、2026年末までに2024年比で2倍になると予測する。こうした中で、CIO(最高情報責任者)には、人間とマシン双方の意思決定者を支えるシステムの構築が求められるようになる。信頼性や正確性、データの完全性が重要になると指摘する。
(編注3)マシン・カスタマーは人の代わりにモノやサービスを購入する経済主体を指す。AIを利用した仮想パーソナル・アシスタントやスマート機器、IoT(モノのインターネット)対応の設備などが自律的に購買を実行する。
日本企業に問われる「マシン・カスタマー」への対応
日本企業の課題について、ガートナーの松本良之氏(ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト)は次のように述べる。
「日本企業のCIOが今、最優先で向き合うべきはマシン・カスタマーの出現だ。2026年までに、マシン・カスタマー向け専門組織を持つ大企業は倍増すると見込まれるが、日本企業の多くはいまだ人間の顧客を前提として設計している」
自律型ビジネスは、各現場にAIエージェントを実装し、機械同士が自律的に取引する基盤が整って初めて成立するというのが松本氏の考えだ。この段階で日本企業の「現場力」が効いてくるという。「正確なオペレーション・データと品質管理の伝統は、マシン・カスタマーの基盤を世界最高水準で築く資産となる。CIOは『システムを守る人』から『現場力をAI時代の競争力へと翻訳する人』に転換する必要がある」(松本氏)
同調査は世界のCEOおよび上級経営陣469人を対象に、2025年第4四半期までの3四半期にわたって実施された。
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