産業用途など実用的なロボットに欠かせないのが、ロボットの高度な自律動作を可能にするフィジカルAI(人工知能)だ(図1)。実現に向けて鍵を握るのが無線通信の進化である。ソフトバンクや米Qualcomm(クアルコム)などが目指す世界観がはっきりしてきた。
米T-Mobile(Tモバイル)最高技術責任者(CTO)のJohn Saw(ジョン・ソー)氏は、フィジカルAIは生成AIよりもさらに巨大な市場になり、数十兆ドル規模に達すると読む。「5G(第5世代移動通信システム)-Advancedや6G(第6世代移動通信システム)のような高度なネットワークは、単なる接続手段ではなく、フィジカルAIのための神経系だと見ている」と通信の重要性を指摘した。
フィジカルAIの登場によって、スマートフォンが中心だったトラフィック(通信量)が大きく変わる。これまでは下り通信が大半だったが、フィジカルAIでは上り通信が増加する。これは、端末上でカメラやセンサーを用いて映像といった大容量のデータを取得し、ネットワークを通じてクラウドにアップロードしてAIが判断・推論する材料にするためだ。
ポイントとなるのは、端末とマルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)との連係だ。軽い処理は端末・ロボット側のみで実行し、重い処理はエッジサーバーであるMECに任せるといったように処理を分散させる。フィンランドNokia(ノキア)最高技術・AI責任者(CTAO)のPallavi Mahajan(パラヴィ・マハジャン)氏は「人間が介在しない世界においては、10ミリ秒のジッター(通信の揺らぎ)でも重大な事故を引き起こすことがある。判断の際にクラウドを経由する時間はないため、推論の分散が重要となる」と述べた。
では具体的に、フィジカルAIのための通信とはどのようなものだろうか。モバイル関連の世界最大級の展示会「MWC Barcelona 2026」(2026年3月2~5日、スペイン・バルセロナ)でソフトバンクとクアルコム、台湾MediaTek(メディアテック)の3社が披露した、各社が目指す世界観とフィジカルAIに向けた取り組みを紹介する(図2)。
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