自動車のブランド価値は量子でつくる、車体設計や材料解析で競演

日経XTECH / 2026/4/6

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要点

  • トヨタやホンダなど大手が量子技術を活用し、車体設計や材料解析を効率化することで性能向上や将来的なブランド価値創造につなげようとしている。
自動車メーカー各社は量子技術を活用したものづくりに本腰を入れる(写真:マツダ)
自動車メーカー各社は量子技術を活用したものづくりに本腰を入れる(写真:マツダ)
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 トヨタ自動車やホンダといった大手メーカーが量子技術の活用に本腰を入れている。量子技術を応用すれば優れた計算能力やセンシング性能を実現でき、自動車の効率的な車体設計やさらなる性能向上が期待できる。将来は自動車メーカーのブランド価値創造に量子技術が欠かせない要素になるかもしれない。

 筆者はこれまで様々なメーカーの研究開発を取材する中で、量子技術の活用事例をいくつか日経クロステックで紹介してきた。基礎研究では既に多くの成果が表れており、その有効性が明らかになりつつある。

 特に自動車の場合、メーカーのブランド価値に直結する車体設計では、流体解析など高度な計算技術が欠かせず、量子計算が重要な要素になりつつある。設計には数理モデル化・数値解析が不可欠で、量子計算が威力を発揮するからだ。

量子計算でものづくりを強化

 量子計算は、様々な用途に利用できる。特に固体力学や熱・流体力学など古典系の問題を取り扱う場面では、シミュレーションや設計最適化に欠かせないCAE(コンピューター支援エンジニアリング)計算を、量子コンピューターを使って効率的に処理する量子CAEが注目されている。実際にトヨタ自動車やホンダは足元で量子CAEの研究に取り組んでいる。

 また電子の動きなどを解析する量子系の問題でも、量子コンピューターを使うことで膨大な計算量を効率良く処理できる。例えば電池向けの新材料や機能性高分子の開発・解析などが期待されている。日経ものづくり2025年12月号では、製造業の研究開発で活用されているこれらの事例を特集記事「量子技術でものづくり革新」で取り上げた。

ものづくりで広く利用されている流体解析や熱解析などのCAE。量子コンピューターを使えば、特定の条件下で計算時間を大幅に短縮できる。効率的な開発によって競争力を高められる(出所:Quemixの資料を一部加工)
ものづくりで広く利用されている流体解析や熱解析などのCAE。量子コンピューターを使えば、特定の条件下で計算時間を大幅に短縮できる。効率的な開発によって競争力を高められる(出所:Quemixの資料を一部加工)
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 特に車体設計に量子計算をうまく活用しているのがマツダだ。同社は複数の車種をまたがる車体構造の設計において、量子技術を使って計算回数を30分の1に減らすことに成功した。

 車の乗り心地(振動抑制・操舵性など)や衝突安全性などから生じる複数の制約条件を考慮しながら、軽量化と部品の共通化という目的を最大限に満たす「多目的最適化問題」を解いた。マツダは最適化計算に特化した量子アニーリング技術を工夫して使うことで、これまで3万回必要だった計算回数を1000回に減らせた。

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計算技術はブランドに直結

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