要旨: ミラ―にのみ映って見える、自分の身体にある印に被験者が触れるかどうかを評価する「ミラー自己認識テスト」は、自我意識の指標として広く用いられている。本研究では、外部報酬を一切用いずに、この行動が単一の仕組みである「自己事前知識(self-prior)」を通じて自発的に生じる計算モデルを提示する。Transformerで実装された自己事前知識は、馴染みのある多感覚体験の密度を学習する。すると新たな印が現れたとき、この学習済み分布からの不一致が能動的推論(active inference)によって印に向かう行動を駆動する。触覚入力なしで視覚と固有感覚(proprioception)のみに依拠するシミュレートされた幼児は、ミラーの中で自分の顔に貼られたステッカーを発見し、明示的な指示なしに約70%のケースでそれを取り除いた。ステッカー除去後に期待フリーエネルギー(expected free energy)が有意に低下し、自己事前知識が「自己」と「非自己」を区別するための内部基準として機能することが確認された。さらに、モーダルをまたいだサンプリングにより、自己事前知識が視覚―固有感覚間の対応関係を捉えており、確率的な身体スキーマとして働くことが示された。これらの結果は、ミラーテストで観察される主要な行動についての簡潔な計算論的説明を提供するとともに、自由エネルギー原理が自己意識の発達的起源を調べるための統一的仮説として機能し得ることを示唆する。コードは以下で利用可能: https://github.com/kim135797531/self-prior-mirror
ミラーマーク課題における鏡像自己優先(self-prior)を用いたアクティブ・インフェレンス
arXiv cs.LG / 2026/4/14
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要点
- 本論文は、ミラーマーク課題において自己認識行動が「自分に貼られた目印」を見て生じることを、外部報酬なしで自発的に再現する計算モデルとして、単一メカニズム(self-prior)を提案している。
- self-priorはTransformerで実装され、馴染みのある多感覚体験の密度を学習することで、初めての目印(novel mark)の出現による分布の不一致がactive inferenceによって目印へ向かう行動を駆動すると説明している。
- シミュレーション上の「乳児」が触覚なしで視覚と固有感覚のみを用いて、鏡に映る自分の顔のステッカーを約70%のケースで取り除けたことを報告している。
- ステッカー除去後に期待自由エネルギーが有意に低下し、self-priorが自己/非自己の内部基準として働くこと、また視覚—固有感覚の確率的ボディスキーマを捉えること(cross-modal sampling)を示した。
- 統一仮説として、発達初期における自己意識の起源を探る枠組みにfree energy principleを位置づけている。




