要旨: 手術中には、医療用ガーゼが患者の体内に置き忘れられるリスクがあり、その結果として患者に「ゴシピボーマ(Gossypiboma)」が生じ、重篤な合併症につながることがあります。また、医療過誤訴訟や規制上の罰則により、病院が法的問題を抱える原因にもなりえます。診断はX線やCTスキャンなどの画像診断法に依存しており、通常の治療は外科的切除です。手作業でのカウントやRFIDを組み込んだガーゼなどの予防策は、ゴシピボーマのリスクを最小化することを目的としています。しかし、看護師が数百枚のガーゼを手作業で数えることは時間を要し、その間、患者ケアのためのリソースがそがれてしまいます。
シンガポール総合病院(SGH)との共同により、手術現場におけるガーゼ計数のためのAIベースの新しい予防方法を開発しました。リアルタイムのビデオ監視と、YOLOv5により駆動される物体認識技術を利用し、2つの指定トレー(ラベルが「In(使用前)」「Out(使用後)」)上のガーゼを監視するためのディープラーニングモデルを設計しました。ガーゼは「In」トレーにある段階から追跡され、患者の体内で使用される前の状態を確認し、使用後は「Out」トレーで追跡することで、正確な計数を実現します。さらに手術終了時にガーゼが患者の体内に残っていないことを検証します。手術室(オペレーション・シアター)から多数の画像を用いて学習させ、考えられるあらゆる状況に適合するよう拡張(オーグメンテーション)も行っています。
本研究では、過去のプロジェクト反復における不足点にも対処しました。以前は、2つのモデルを使用していました。1つは人の検出、もう1つはガーゼの検出で、合計2,800枚の画像で学習していました。今回は統合モデルを導入し、人とガーゼの両方を識別できるようにし、学習用データセットは11,000枚の画像を用いています。その結果、精度が向上し、フレームレートは8 FPSから現在15 FPSへと増加しました。医師のフィードバックを取り入れたことで、システムは手動カウントの調整にも対応し、実際の手術における信頼性を高めています。