「AI需要で半導体不足」の裏で本当に起きていること 東京エレクトロン デバイス幹部が明かす

ITmedia AI+ / 2026/4/28

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要点

  • 半導体不足は「AI需要でデータセンター向け製品が増えたから」と説明されがちだが、実際にはGPUだけでなくメモリやアナログ、パワー、ロジックまで広範で納期が長期化している。
  • 東京エレクトロン デバイスは、AI向け供給の優先によって他業界向けの枠が削られ、6カ月だった納期が1年になるなど需給が全体で崩れていると指摘した。
  • 「パニックオーダーに近い状況」で、先んじた発注への危機感から顧客の先行手配が発生しているが、その収まり時期は市場の状況次第で当社も把握できていない。
  • 同社の決算では、IT投資の追い風でCN事業は増収増益だった一方、EC事業(半導体関連)は在庫調整の影響で減収減益となり、半導体需給の歪みが業績にも波及している。

 半導体不足が深刻だ。「AI需要の高まりを受けて、AI向けデータセンターに多くの製品が流れた結果、品薄や価格高騰につながっている」と説明されることが多く、ビジネスにも影響を及ぼしている。

 「AIサーバの需要増加によって、メモリ半導体の需給がアンバランスになり、電子デバイスだけでなくサーバ、ネットワーク機器、ストレージ機器までリードタイムの長期化が顕著になっている」――半導体やIT機器の専門商社・東京エレクトロン デバイスの宮本隆義社長は4月28日、2026年3月期の本決算説明会でこう述べた。

 影響が広がる背景には「半導体不足」と一口に言っても、米NVIDIAのGPU(画像処理半導体)のような上位モデルにとどまらない点がある。半導体不足の裏側で起きていることを、供給者である東京エレクトロン デバイスの幹部が明かした。

photo 東京エレクトロン デバイスの宮本隆義社長(出所:本決算説明会のキャプチャー)

半導体を巡って「パニックオーダーに近い状況」

 東京エレクトロン デバイスの2026年3月期決算において、売上高は約2037億円で前年同期比で126億円、5.8%の減少となった。

 事業領域別では、コンピュータシステム関連の「CN事業」が堅調なIT投資を追い風に増収増益となった一方で、同社の主力である半導体関連の「EC事業」はサプライチェーンの在庫調整が影響して減収減益となった。

 半導体を巡る動向について、宮本社長と長谷川雅巳コーポレートオフィサーによる本決算説明会の発言を抜粋して紹介する。

半導体不足がいつ落ち着くのか「私たちも知りたい」

長谷川コーポレートオフィサー 半導体の長納期化によって、2027年4月分や7月分の受注が入っている。長納期化は単発的な話ではなく、しばらく続くと考えられる。

 (在庫調整が一段落して需要が回復傾向にある他、将来の供給不安を懸念した企業による)世界的にパニックオーダーに近い状況で、全ての納期が長期化しているため「先んじて発注しないと手元に入ってこない」という危機感から起きている。顧客の先行手配は今後落ち着くとみられるが、これがいつ収まるのか私たちも知りたい。

「AIデータセンター特需」が半導体不足を起こした理由

長谷川コーポレートオフィサー 半導体の長納期化は、AIデータセンターの特需に起因している。メモリ(データを保管する記憶装置)やプロセッサ(CPUやGPU)だけでなく、アナログ半導体(光や音を電気信号に変える)、パワー半導体(電流を制御する)、ロジック半導体(計算処理を担う)に至るまで全体的に納期が長期化している。

 データセンター向けというと、NVIDIAのGPUを思い浮かべるかもしれないが、それらを動かす(電源制御用などの)アナログ半導体が必要だ。(メーカーがAI向け供給を優先した結果、他業界向けの枠が削られ)半導体市場において全体的にデータセンターやAIに持っていかれている。その結果、6カ月だった納期が1年になるなど長期化している。

photo 東京エレクトロン デバイスが取り扱っている品目(出所:本決算説明会の発表資料)

半導体供給のボトルネックはどこにある?

長谷川コーポレートオフィサー 半導体を構成する素材は「ハイエンドGPU」「パワー半導体」など種類によらず共通。生産体制が整う前に、半導体の需要が回復したこと、データセンター市場が活況になったことが背景にある。

 半導体の製造工程では、パッケージング工程(切り出したチップに外装を施す最終工程)とテスト工程がボトルネックになっている。パッケージング時の部材も長納期化しているため、影響が出ている。2021~2023年の半導体不足と同じ状況。

半導体の取り合い、実際の現場は

宮本社長 長納期化を受けた製品の確保について、顧客同士が直接取り合うわけではなく、メーカー側がアロケーション(割り当て)している。メーカー側も「分野ごとに優先させなければならない」という状況があると聞いたことがある。

 顧客自身が確保に動けないため、先行して発注する動きが出ている。当社としても厳しい状況で、納期がない、いつ入って来るか分からない状況にある。

企業のIT投資はどう変わるか

宮本社長 メモリや半導体の価格高騰を受けて、AI以外の一般向けIT製品の価格までもが2倍以上に値上がっている。顧客の予算に収まらず「保証延長でしのぐ」「違うものに切り替える」など購入を控える流れが出てきている。

中東情勢の影響は?

宮本社長 当社の事業が、中東情勢に直接影響を受けることはないと思う。しかし、半導体に使う化学物質などを中東に依存している部分があるため、間接的な影響はある。



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