ロボ大手2社の戦略 人型との距離に違い

日経XTECH / 2026/5/12

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要点

  • ファナックはNVIDIAと連携し、ロボット制御のオープン化を進めてフィジカルAIによる高度自動化を加速する方針だ。
  • フィジカルAIで目指すのは、これまで難しかった高難度作業(3次元情報をリアルタイムに扱い把持・作業まで行う等)と、言語などで“自動化できる状態”を広げることだ。
  • 自動化が進んでもSIerは不要にならず、フィジカルAIは人材不足を補完し、SIerがいない地域や技術がない分野の自動化領域を拡張する役割だと述べている。
  • 人型ロボットについては「形から入らず、用途から判断する」立場で、現状は産業用途で人型が必須となる領域は限定的だとして距離を置く。
  • 需要拡大の背景には人手不足に加え、物流増(EC等)や新製品・新市場の登場による自動化ニーズの広がりがある。

産業用ロボット大手のファナックと安川電機が、ともにフィジカルAIの事業拡大を急ぐ。ファナックは外部の最先端AI技術を取り込み、安川電機は人型ロボの業容拡大に力を注ぐ。両社のキーパーソンに、技術戦略や事業拡大の狙いを聞いた。

ファナック 脱・自前主義、人型は静観

安部 健一郎(あべ・けんいちろう)氏
安部 健一郎(あべ・けんいちろう)氏
ファナック ロボット研究開発統括本部統括本部長。1993年ファナック入社、2005年ファナックアメリカコーポレーション筆頭副社長、2016年ロボット機構開発研究所所長(現・ロボット機構研究開発本部本部長)、2018年常務執行役員、2024年にロボット研究開発統括本部長に就任。ロボット開発に従事。
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フィジカルAIによる自動化が進んでも、人手不足で自動化要求が高まる中でロボットSIerの仕事はなくならないと語る(写真:中山 博敬)

 産業用ロボット大手のファナックは米エヌビディアと組み、ロボット制御のオープン化を加速。これまで困難だった領域の自動化に積極的に取り組む。

 2027年末には9000万ドル(約143億円)を投じて米国に新工場を建設し、フィジカルAIの需要拡大に対応する。一方で、昨今ブームに沸く人型ロボットとは距離を置く。

フィジカルAIで目指す世界は。

 大きく2つある。1つは今までできなかった高度な作業の実現だ。例えば3次元的に動いているワークの位置をリアルタイムに把握しながら(検出しながら)見てつかむだけでなく、作業までこなせる。

 もう1つは、簡単に(自動化)できるようにしていくことだ。様々な分野でロボットの需要が広がる一方で、自動化技術を持つ人材が少ないため、ロボット工学やプログラミングを習っていなくても(ロボットを)使えるようにする必要がある。例えば、言葉を認識して自動でプログラムを書き、それを実行するといった世界だ。

フィジカルAIによる自動化が進むと、現場での微調整やティーチングが要らなくなると言われている。現場への導入に当たってロボットシステムインテグレーター(SIer)の仕事は減るのか。

 決してSIerが要らなくなるわけではない。自動化したい領域が増えている中、(フィジカルAIは)SIerがいない地域や技術がない分野を拡張し、人材不足を補完するためのものだ。泥臭い仕事は減るかもしれないが、ロボットが人の職場を奪うわけではなく、人が足りないところを埋めるのが役目となる。

自動化したい領域が増えている背景は何か。

 大きいのは人手不足という社会課題だ。今まで人が作業していた現場に人が集まらなくなっており、人じゃないと作業できないとされていた領域の自動化が求められている。

 もう1つは、物流が、Eコマース(電子商取引)の台頭などで増えてきたこと。また、携帯電話機やタブレット端末など、皆が使う新しい製品・市場が出てくると、そこに対して自動化・ロボット化が必要になるという広がりがある。

昨今注目を集めている人型ロボット(ヒューマノイド)についてどう考えるか。

 現場は形ありきでは考えない。「何をさせたいか」から始まる。将来的に、人型でないとできない作業が出てきて、条件がそろい、需要と合致したタイミングになれば、当然その形(人型)の製品を出していくと思うが、現状の産業用途で「人型でなければできない」という領域はまだ限定的だ。人型は、中国や米国のパフォーマンス的な動きが先行している印象だ。

 生産現場で求められるソリューションは機能・性能、信頼性、コストの3つ。現時点では人の形をしている必要がないタスクが多く、産業用ロボットで対応できる。

ヘルスケア領域では人型ロボットの試験導入が出始めた。

 家庭向けや介護向けの領域では、別の要素が関わってくる。人と接することが多い介護現場などは、産業用ロボットに(自身の)体を持たれるより、人型で優しそうなロボットの方が適している。「かわいい」「癒やされる」と思えるかどうかが、別の仕様として重要になる領域だ。人型である必要性がある。

 ただ、我々がその領域に参入することは考えていない。生産現場だけでも解決すべき課題があり過ぎるからだ。生産現場向けでやるべきことがなくなったら他への展開も考えられるが、現時点で別領域に参入する予定はない。

 とはいえ、産業向けと家庭向けの領域間が不明瞭になってきているとは感じる。我々のロボットが、カクテルづくりやラーメン製造に使われていることもあった。「やりたければできる」という環境自体は整っている。決して人型ロボットを否定しているわけではない。

様々な市場への広がりにより、ロボット分野に大手ITやテクノロジー企業が参入している。

 我々としては(新規参入者との)勝ち負けというより、顧客が抱える人手不足や技術継承、コスト削減といった課題の解決に焦点を当てている。課題を解決していくことで、結果として会社が勝つ。

 外部プレーヤーが増えてきたことも、「邪魔者が出てきた」という意識は全くなく、社会課題を解決していく上でのパートナーであり、一緒にやっていく存在と捉えている。

 これまで長らく産業用ロボットで工場の自動化を手掛けてきたが、今や自動車から航空宇宙、物流、食品、医療、農業、造船など世界中の全セグメントの自動化を我々だけでカバーするのは難しくなってきている。AIなど様々な新技術が出てくる中で、今あるものは活用し、やってもらえるところは(新しいプレーヤーに)やってもらい、必要とされている自動化に貢献する。その手段がフィジカルAIと「オープンプラットフォーム」だったということだ。

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手段としてのオープン化

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