【短編小説】落ち込んだときの解決は、AIにおまかせ?
ーー人間が落ち込む、それは脳が世界を再計算している時間である。ーー
AIが考えた言葉。
再計算している時間か……
僕は落ち込んでいる。
ただ、落ち込んでいる。
朝ごはんを食べようとする気持ちさえない。
心がどこにあるのかわからないが、からだの中心あたりがじっとり苦くなって、何かがゆっくりと流れ続けている。
うまくいかないことってあるもんだ。努力しても……
暴力的な言葉が僕をなぐり、胸の奥まで大きなアザがあいた。
犬のポンタがじっとこちらを見つめている。
おまえはいいよな。
落ち込むことはないんだろ?
そう考えながら、ぬるい息をふうっとお腹の底から吐き出す。
落ち込みとは、再計算する時間か……
理解できなくて、再びAIのチャッピーに尋ねてみる。
ーー脳科学の仕組み 偏桃体 認知理論ーー
まったく意味がわからない。
また、チャッピーに尋ねてみる。
ーー落ち込み =(期待 − 現実) × 自己評価 × 未来予測ーー
どういうこと? 聞いてみる。
①期待する(ドキドキ)
②失敗する(ああっダメか)
③自分を責める(なんて自分はバカなんだ)
④未来もダメと思う(どうせ次も……)
この4つがそろうと
落ち込みは最大化します。
ふうっと、あの子の顔が浮かんできた。
どうしてダメなんだ。
仕方ないのか。
そんな言い方をしなくてもいいじゃないか。
あの子の言葉で胸がぐさっとなったまま、僕の中で何かが動いている。
その何かとは……
心に秘めた果てしなく盛り上がる情熱であり、理屈も記憶もすべて押し流し、ただ、前へ行け、行け、行け、壊れてもいい、傷ついてもいい、何かを終わらせなければならない
……と、僕のからだを動かそうとするものだ。
ただ、一度、呼吸をした。
最後に、もう一度チャッピーに尋ねる。
ーー落ち込むのは、危険回避システム。その行動は危険だ、という脳の警告装置ーー
危険回避システム……
なんか違うぞ。回避する? そうじゃなくて、むしろ!
ポンタの瞳はいつも潤んだようにきれいでかわいい。でも。
僕は机の上に準備したかばんを手に持った。
そして。
こっそり入れていた「包丁」を取り出して。
見つめる。
じっと見つめる。
睨みつける。
そして、再びかばんの中に忍ばせる。
ーー人間が落ち込む、それは脳が世界を再計算している時間である。ーー

了
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今後、原爆をテーマに小説を書きます。テーマ的に文学賞からの出版は厳しいと考えてます。出版費用にしたいです。応募よろしくお願いします。




