本稿では一般企業の基幹システムのコアにAI(人工知能)のパワーを確実に、正確に導入するための具体策を提案します。
インターネット上の無数の情報を基にした生成AIは世の中の一般解をかなりの精度で瞬時に提供してくれるスーパーマンとして我々の日常生活を大きく変えつつあります。同様のAIパワーを一般企業のコア業務に適用したいと考えるのはごく自然の流れです。
私は基幹システムの伸びしろは無限大と考えています。基幹システムを発展させていくとき、AI利用は欠かせなくなるでしょう。
企業のコンテキストをAIに伝える
AIをコア業務に適用しようとすると、おのおのの企業特有のデータに関する課題に直面します。ビジネスメタデータ(ビジネスで使うデータの意味を説明するデータ)の整備です。この課題をクリアせずに、やみくもにAIを振りまわしても失敗するだけです。
ビジネスメタデータは企業特有のコンテキスト(文脈)をデジタル情報として形式知にしたものです。これを整備し、企業の実務に使うAIモデルに読み込ませ、AIに企業独自のビジネスルール、企業文化、方言、とりまく背景などを学ばせます。
インターネットの膨大なデータを基にした消費者向けAIが扱うコンテキストと比べると、企業のAIが扱うコンテキストははるかに狭いものの、ずっと深いです。この深さは世の中一般の言語解釈では把握できません。
しかも企業向けAIの場合、コンテキストを精密に用意しなければなりません。基幹システムはその企業にとって唯一無二の正解を1円違わず瞬時に出力することが求められます。基幹システムでAIを使う場合も同様であり、プロンプトを入れて対話し、正解までの道筋をたどっている時間はないのです。
ビジネスメタデータはデータカタログというデータベースに格納し、あらゆるビジネスユースケースに活用してこそ、価値が最大になります。必要なデータがどこにあるかをすぐ探し出せるので、AIを使わないケースでも役立ちます。例えば、新システムの開発プロジェクトでユーザーヒアリングなどに要する時間が激減します。
ビジネスメタデータを捕捉する
それではビジネスメタデータの整備手順を説明します。私が多くの企業に提案し、実践いただいているやり方です。
最初に企業内でデータが発生する地点に着目して、その意味を可視化します。取引発生時点で捕捉する取引先情報や受発注の取引記録、これらを構成するデータの定義がこれに相当します。
このやり方はビジネスで使うデータから可視化していくもので、データ分析システム内のデータを可視化するところから始めるやり方とは異なります。いわゆるデータウエアハウス(DWH)製品の流行にともない、後者のやり方をする企業が多いかもしれません。誤りではありませんが、DWH内の参照用データを正確に説明しようとすると、そのデータの由来をさかのぼり、データの源泉を探る必要が生じます。ということで私は当初から源泉を可視化するやり方をお勧めします。
具体的には、同類のデータ群を束ねたエンティティーの名称・意味・データオーナー、エンティティー内のデータ属性の名称・意味・導出方法などがビジネスメタデータになります。
ビジネスメタデータの内容をテクニカルメタデータと並べて表にまとめました。総じて、ビジネスメタデータは論理的であり、テクニカルメタデータは物理的な内容になります。論理的には同じデータが物理的には複数箇所に存在しますので、両者は1:Nの関係にあります。






