日立のフィジカルAI統合モデル「IWIM」の実力は? 試作ロボット2種を公開

ITmedia AI+ / 2026/3/25

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要点

  • 日立は、JR東京駅直結の協創施設で先行公開する「フィジカルAI体験スタジオ」に併せ、現場で学びながら動作を最適化し複雑作業を自動化するフィジカルAI技術と試作ロボット2種を公開した。
  • フィジカルAI統合モデル「IWIM(Integrated World Infrastructure Model)」を基盤に、Cognition/Criticality/Coordinationの3CとThink/Act/Sense/Storeの4ループでミッションクリティカル現場向けの技術開発を進める方針を示した。
  • 実装された技術は「継続学習技術」「高速推論AIモデル」「全身協調動作学習技術」の3要素を組み合わせ、導入後に得られるデータや熟練ノウハウを取り込み続ける設計を特徴としている。
  • 公開した試作ロボットは、ケーブルを基板のクリップに組み付ける敷設作業を自動化するものと、部品ピッキングのしやすい位置へ自律移動して作業を行うものの2種類で、後者は5本指ハンド作業の最適化途中だとしている。

 日立製作所(以下、日立)は2026年3月23日、JR東京駅直結の協創施設「Lumada Innovation Hub Tokyo」(東京都千代田区)内に開設する「フィジカルAI体験スタジオ」の先行公開に併せて、現場で自ら学びながら動作を最適化し複雑作業を自動化するフィジカルAI(人工知能)技術を発表するとともに、同技術を実装した試作ロボットを公開した。

 公開した試作ロボットは2種類。1つは柔軟物であるケーブルを基板に組み付ける敷設作業を自動化するロボットで、もう1つは作業しやすい位置で部品のピッキングを行うために自律的に移動するロボットだ。

日立が試作したケーブル敷設作業を自動化するロボット。基板上にある3カ所のクリップにケーブルを挿入するデモの様子[クリックで再生]
日立が試作した部品ピッキング作業を自動化するロボット。右腕での部品のピッキングをしやすいよう自律的に移動するデモの様子。5本指ハンドで箱に部品を挿入する作業はまだ最適化の途中とのこと[クリックで再生]
日立の山田弘幸氏 日立の山田弘幸氏

 日立 研究開発グループ モビリティ&オートメーションイノベーションセンタ ロボティクス研究部 リーダ主任研究員の山田弘幸氏は「フィジカルAIによってロボティクスは大きく進化しており、産業の汎用性は高まっている。ただし、現場レベルの複雑作業を担うのにはまだ困難を伴う状況にある。そこで日立では、長年携わってきた社会インフラをはじめとするミッションクリティカルな現場に対応可能な基盤として、フィジカルAI統合モデル『IWIM(Integrated World Infrastructure Model)』の開発を進めている」と説明する。

 IWIMでは、ドメインナレッジやプロダクトなど日立の知の蓄積をデータとして活用し、ミッションクリティカルな現場への対応で必要となるCognition(認知)、Criticality(堅牢(けんろう)性)、Coordination(制御)から成る3Cを基軸に、Think、Act、Snese、Storeの4つのループを回して、現場に最適なフィジカルAI技術を開発する。

IWIMの概要 IWIMの概要[クリックで拡大] 出所:日立

 このIWIMを基に開発したのが、今回発表した、現場で自ら学びながら動作を最適化し、複雑作業を自動化するフィジカルAI技術である。「継続学習技術」「高速推論AIモデル」「全身協調動作学習技術」という3つの要素技術を組み合わせて実現した。

開発技術の概要 開発技術の概要。3つの要素技術を組み合わせて実現した[クリックで拡大] 出所:日立

 「継続学習技術」では、現場への導入後も得られる作業データや熟練作業者のノウハウをAIが自動的に取り込むことで継続的に学習する。例えば、柔軟物であるケーブルを敷設する作業はシミュレーションが難しいため、熟練者の作業などの現実世界のリアルなデータを基にした模倣学習を基にAIモデルを構築することが多い。ただし、模倣学習は人の操作に依存するため、ロボットにとって必ずしも最適なの動作になっていないことが多い。そこで、AIモデルによる予測動作を最適制御によってリアルタイムに補正するれば、動作が滑らかになり速度向上が可能になる。さらに、補正後の実機動作を再学習すれば、効率良く最適動作を学習できるので、さらなる速度向上が図れる。もし、レイアウト変更や照明の変化などがあっても、この継続学習の仕組みを活用すれば自律的な適応も可能になる。

「継続学習技術」の概要 「継続学習技術」の概要[クリックで拡大] 出所:日立

 実際に、ケーブル敷設作業を自動化する試作ロボットの事例では、最初の模倣学習の段階で作業時間は47秒かかっていたが、継続学習1回目で21秒、2回目で12秒、3回目で10秒に短縮することに成功している。

ケーブル敷設作業を自動化する試作ロボットの作業内容 ケーブル敷設作業を自動化する試作ロボットの作業内容[クリックで拡大] 出所:日立
「継続学習技術」の効果 「継続学習技術」の効果[クリックで拡大] 出所:日立
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