情報処理技術者試験の見直しに異議あり、DXに重要な職種を消してどうする

日経XTECH / 2026/4/13

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要点

  • 経産省の「情報処理技術者試験制度の見直し」により、ITストラテジスト試験とシステムアーキテクト試験が「プロフェッショナルデジタルスキル試験」に統合され、名称ごと消える方向だと指摘する。
  • 著者は、DXに不可欠な人材である両高度試験を消すのは悪手で、項目を盛り込んでも名称消失の影響で学習・育成の軸が崩れる恐れがあると批判している。
  • 新試験は「データ・AI」「マネジメント」「システム」の3領域で整理されるが、「システム」領域に他試験(ネットワーク/エンベデッド)要素も含まれ、領域の相性が悪い(“水と油”)という懸念を述べる。
  • 著者は2回の記者レクで担当者に対し、試験名称の扱いを再考するよう訴え、2027年度以降の開始前に再検討を求めた。

 本当にうっかりしていたと我ながらあきれてしまう。何の話かというと、情報処理技術者試験の見直しが妙な方向に行くことを見落としていたことだ。具体的には、「ITストラテジスト試験」と「システムアーキテクト試験」が消滅してしまうことに気付かなかったのだ。今回の見直しは、生成AI(人工知能)などの爆発的普及も踏まえ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する人材の育成に資するためだと私は理解しているが、このままでは逆効果になるかもしれないぞ。

 実は、経済産業省による「情報処理技術者試験制度の見直し」の記者レクチャーを2回聞いた。2025年12月22日と2026年4月3日だ。そして12月の時点で、ITストラテジスト試験やシステムアーキテクト試験などの高度試験と応用情報技術者試験を、「マネジメント」「データ・AI」「システム」の3領域に区分けした「プロフェッショナルデジタルスキル試験」に再編するという話が出ていた。ところが、間抜けなことに私は「ああ、こんなふうに見直されるんだな」と思った程度だった。

 情報処理技術者試験の見直しでは、技術者でない人を対象にした「データマネジメント試験(仮称)」の創設や「ITパスポート試験」の見直しなどもあるが、それらの取り組みについて文句はない。大問題だと思うのは、できることなら今からでも再度見直すべきだと考えるのは、高度試験と「応用情報技術者試験」の再編である。ITストラテジスト試験を「プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(仮称)」に、システムアーキテクト試験を「プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(仮称)」に「解消」するのは、悪手以外の何ものでもない。

 なぜ悪手かというと、話は簡単だ。ITストラテジストとシステムアーキテクトは後で書くが、ビジネスアーキテクトと並んでDXには不可欠な人材だからだ。そんな重要な人材なのに情報処理技術者試験から「消去」してしまうという。経産省は今回の再編について、DXを推進する上で横断的で幅広い知識の習得を技術者に促すためとしているようだ。だけどねぇ、その意図が正しいとしても、ITストラテジストとシステムアーキテクトだけは絶対に消し去っては駄目だと思うぞ。

 経産省の担当者が言うには「新しい試験にはITストラテジストやシステムアーキテクトの重要な項目をきちんと盛り込む」とのことだ。ただねぇ、いくら試験の項目として盛り込んでも駄目なんだ。ITストラテジストやシステムアーキテクトの「名称」を消してしまってはいけない。それに、例えばプロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験には、システムアーキテクト試験に加え、「ネットワークスペシャリスト試験」と「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」の要素が盛り込まれる。まさに水と油じゃないか。

 そんな訳なので4月3日の2回目の記者レクでは、経産省の担当者にITストラテジストやシステムアーキテクトを消し去ってしまってはいけないことを訴えておいた。さらに「この件は『極言暴論』で書きますよ」と仁義も切っておいた。もちろん、私は情報処理技術者試験の見直し自体に文句を付けるつもりはない。DXを担う技術者には広い視野が必要であることにも異存はない。ただ、このままでは日本企業のDXの取り組みをミスリードする可能性がある。新試験の開始は2027年度以降だが、その前にぜひ再検討してくれ。

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