武田軍も鉄砲を持っていた、「強者が変われない」構図が今のAI戦略に重なる

日経XTECH / 2026/5/19

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要点

  • 長篠の戦いを「デジタル時代の長篠」として捉え、AIを当時の鉄砲に喩えて、武器そのものではなく“前提にした戦い方の再設計”が勝敗を分けたと述べる。
  • 武田軍も鉄砲研究を進めていたが、自軍の強みである騎馬隊中心の戦術に組み込む完成度・統合が難しいと判断し、戦い方を変えられず敗れたという通説を紹介する。
  • 織田軍は鉄砲を前提に、三段撃ちで弱点を克服し、陣形や兵の配置など組織・戦術を根本から作り直した点が対照的だとする。
  • この構図を現在のAI戦略に重ね、「AI(鉄砲)を“使う”だけでは不十分で、業務・組織・プロセスを再設計できるかが鍵」という示唆を与える。

 「なんでこっち(武田軍)は、鉄砲を使わなかったの?」――。とある週末、6歳の息子と歴史漫画を読んでいたとき、そんな質問が飛んできた。

 テーマは「長篠の戦い」。織田・徳川連合軍が、当時最強とうたわれた武田軍の騎馬隊を打ち破った、あの決戦だ。

写真はイメージ
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(出所:Adobe Stock)
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 歴史が得意ではない記者は、「どうして戦ったの?」「なんで武田軍は負けたの?」と矢継ぎ早の質問に、しどろもどろで答えた。それでも、息子の一言だけは妙に頭に残っていた。

デジタル時代の長篠の戦い

 その翌週のことだ。産業技術総合研究所(産総研)子会社のAIST Solutions Vice CTOの和泉憲明氏をインタビューする機会があった。

 「これは、いわばデジタル時代の長篠の戦いです」(和泉氏)

 和泉氏の話が長篠の戦いに及んだとき、思わず身を乗り出してしまった。

AIST Solutions Vice CTOの和泉憲明氏
AIST Solutions Vice CTOの和泉憲明氏
(写真:日経クロステック)
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 突然、「長篠」というワードに過剰反応した記者に和泉氏は少し戸惑った様子だったが、すぐに言葉を整え、丁寧に解説してくれた。和泉氏は昨今のデジタル時代を長篠の戦いに例え、AI(人工知能)は当時の鉄砲に相当すると説明する。

 和泉氏の解説で、最も印象に残ったのは武田軍も決して時代遅れだったわけではない、という指摘だ。鉄砲の研究も相当に進めていた。それでも「完成度の高い自軍の戦術に組み込むのは難しい」と判断し、慣れ親しんだ騎馬隊主体の戦い方を貫いたというのが通説だ。そして、敗れた。

 一方の織田軍は、鉄砲という新しい武器を前提に、戦術と組織を根本から作り直した。装填の遅さという弱点を克服する「三段撃ち」を編み出し、それに合わせて陣形も、兵の配置も変えたといわれている。

 勝敗を分けたのは、武器の性能ではない。「武器を前提にした戦い方の再設計」だった。この構図が、「現在のAIをめぐる企業の状況と重なる」と和泉氏は言うのである。

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「使う」だけなら、どの企業もやっている

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