AIが数学の未解決問題を相次いで解決、証明の鍵は「形式化」

日経XTECH / 2026/4/6

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要点

  • Epoch AIが、OpenAIのGPT-5.4 Proでディオファントス方程式の「有限性問題」の一部を解く結果を公表し、非常に大きい整数条件を満たす解の発見から無限存在の可能性を示した。
  • AIの成果として、エルデシュの未解決証明問題集の728番をGPT-5.2 Proが証明したと報じられ、数学分野でも生成AIが証明探索に波及している。
  • 数学の証明は検証と承認が必要で、過去にはSNS投稿が誤りだった例もある一方、今回の証明は発表後に数学者から称賛が相次いだ。
  • 称賛の背景として、数学界を変える可能性がある「証明の形式化」が鍵になっていると指摘され、検証可能性が評価を左右した可能性が示唆された。

 AI(人工知能)が数学界でも注目を集めている。AIが数学の未解決問題を相次いで解決したからだ。AIの能力や影響を研究する非営利機関のEpoch AI(エポックAI)は2026年3月5日、米OpenAI(オープンAI)のGPT-5.4 Proが「ディオファントス方程式」において有限性問題の一部を解いたと公表した。

 ディオファントス方程式は整数の解を探す多項式方程式の総称で、有限性問題はその方程式を満たす整数解が有限個か無限にあるかを考える問題だ。例えば、y=2x+4を満たす整数解は無限にある。xにどんな整数を入れても、それに対応する整数のyが決まるからだ。

「y=2x+4」では、xに整数を入れるたびに対応する整数のyが決まるため、式を満たす整数解は無限にある
「y=2x+4」では、xに整数を入れるたびに対応する整数のyが決まるため、式を満たす整数解は無限にある
(出所:日経クロステック)
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 エポックAIによると、GPT-5.4 Proに対して、x、y、zの3変数からなる方程式について、xが非常に大きいという条件を満たす整数解を3組見つけるよう求めた。9つの方程式を与えたところ、2つの方程式で3組を見つけたという。x、y、zの数値が小さい(正確には、絶対値が小さい)と解は見つけやすいが、大きいと見つかりにくくなる。今回はxの絶対値が10の50乗(100極)を超えるという条件を満たす解を発見したため、「解が無限に存在する」可能性が高いと当たりが付いた。

 数学の証明分野でも、AIの活用が進んでいる。2026年1月の初め、AIが数学の未解決問題を解いたとして大きな話題になった。数学者のポール・エルデシュが提起した未解決証明問題集に収められた728番をオープンAIのGPT-5.2 Proが証明したというのだ。

エルデシュ問題728番の問題文。十分小さい定数 C>0、ε>0 に対し、条件を満たす整数(a、b、n)が無限に存在するかを問う。専門外だと、問題文だけを見ても内容をつかむのは難しい
エルデシュ問題728番の問題文。十分小さい定数 C>0、ε>0 に対し、条件を満たす整数(a、b、n)が無限に存在するかを問う。専門外だと、問題文だけを見ても内容をつかむのは難しい
(出所:Erdős Problemの公式サイトを日経クロステックがキャプチャー)
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 ただ、数学の証明においては「解けた」と発表があっても、別の数学者がその証明内容を検証し、「正しい」というお墨付きをもらうまでは疑って見られることが多い。実際、2025年10月にはオープンAIの関係者が「ChatGPTが複数のエルデシュの未解決証明問題を新たに解いた」とSNSに投稿した後、実際にはそうでなかったことが判明した。関連する既存の文献をインターネット上から探してきただけだった。

 ところが、今回の証明は「正しい」ものとして、発表直後から名だたる数学者からの称賛が相次いだ。なぜこうした反応が起きたのか。背景にあるのが、今の数学界を変える可能性がある「証明の形式化」だ。ZEN数学センターの所長を務める、ZEN大学の加藤文元教授に話を聞いた。

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なぜ今回は「本当に解けた」とみられたのか

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