フィジカルAI(人工知能)活用の代表格とも言えるのが人型ロボットだ。米国や中国で盛り上がりを見せる一方、かつて世界をリードした日本の影はいまや薄い。だが、手をこまぬいているわけではない。独自のAI開発や、高い技術力を持つ部品産業の市場参入促進で巻き返そうとの動きが活発化している。
AI学習量、部品供給網のどちらも勝る中国
人型ロボットにおける中国の成長は著しい。例えば、2025年に日本法人も立ち上げた智元機器人(AgiBot、エージーアイボット)は、出荷台数ベースで世界首位を記録、2026年3月には人型ロボットの累計生産台数が1万台に達したと発表した(図1)。
エージーアイボットの強みは、ロボットを動かすAIも自前で構築する点だ。同社は、大規模言語モデル(LLM)と画像情報からロボットの行動を生成するVLA(Vision-Language-Action)モデル構築に向け、人間がロボットに動作を覚えさせる学習拠点を持つ。実際に同社からデータセットを直接購入したロボット関係者は、「現場を視察したが、約10拠点で8時間2交代制のデータ収集体制に驚かされた。とんでもなくデータが増えている」と明かす。
ハードウエア面でも、中国にはドローン産業を背景に構築された部品供給網がある。人型ロボットなどを開発するアールティ(東京・千代田)代表取締役の中川友紀子氏は、社内で四足歩行ロボットの試作をゼロから始めて歩行させるまで「4週間半を要した」と振り返る。もし中国の新興企業が同じことをした場合、中川氏は「3週間で作り上げるだろう」と見る。この1週間半の差が、日本と中国の部品供給網の差だと指摘する。
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