人間より頭がいいAIエージェント、日々痛感する「息苦しさ」の正体

日経XTECH / 2026/4/7

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要点

  • AIエージェントの企業浸透が進み、従来の「AIツール活用」から「エージェント前提」へ業務の前提が変わりつつある。
  • 日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)は、生成AI/AIエージェントの影響で一部のエンジニアが代替され、対応できない人員は役割喪失・退場もあり得ると明言した。
  • TCSはAIに追随できる人材を増やすためリスキリングを進め、低単価のマニュアル作業中心(オペレーター)をプロンプトエンジニア等へ置き換える方針を示した。
  • 同社の社員数は最大約61万人から2026年1月時点で58万人へ減少しており、雇用面でもAIエージェントの影響が顕在化している。
  • 取材を通じて筆者が感じる「息苦しさ」は、AIが部分的にでも人間より賢くなったことで、職務再編の圧力が現実味を帯びてきたことに由来する。

 AI(人工知能)エージェントが企業に浸透し始めた。日経クロステックでは「AIエージェントが壊す5つの常識」という特集で、AIエージェントを活用する各企業の動向を紹介した。

 筆者はこの特集に当たって、先進的にAIを活用するさまざまな企業を取材した。興味深くワクワクしながら取材を進められた一方で、息苦しさも感じるようになった。これまでもAI関連の取材をしてきたが、この息苦しさはここ最近のものだ。

 息苦しさ。それは、AIエージェントが人間よりも部分的に賢くなったことに起因して生じたものだろう。

AIに追随できなければ「退場」

 「AIについて来られないエンジニアは辞めてもらう。当社はこれまでリストラを実施してこなかったが、こうした事態が起こっている」――。2026年3月12日に日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)が開催したメディア向け勉強会で、同社の森誠一郎専務執行役員はこう話した。

 TCSは世界各国の企業からITシステム関連業務をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)で受託する、いわゆるオフショア開発を手掛ける企業だ。同社の強みは、圧倒的なエンジニア数を抱える点だ。人員を必要とする大規模な開発に対応できる。

 しかし生成AIやAIエージェントの浸透は同社にとって逆風でもある。一部のエンジニアはAIによって代替され、役割が失われ始めたからだ。

 TCSはAIに代替される可能性のあるエンジニアを中心にリスキリングを進め、役割の再配置を図る。日本TCSの森専務執行役員は「(AIによる影響で)オペレーターと呼ばれる、マニュアル通りに作業するローエンドで単価の低いエンジニアを、プロンプトエンジニアへ置き換える」と語る。

 付け加えて、こう述べた。「中にはできない人もいる。申し訳ないが退場してもらう」(同)――。

 実際にTCSはエンジニアの雇用を縮小し始めている。当初グローバルで最大約61万人いた同社の社員数は、2026年1月時点で58万人に減少した。AIエージェントに追随できなければ、役割を失う局面が増えているわけだ。

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人間がボトルネックに

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