小説や脚本を AI と書くとき、いちばん効くのは「いきなり本文を書かせない」ことです。先に物語の骨格(構造)と登場人物の設計図(キャラ表)を人間が決め、それを毎回 AI に渡す。すると AI は無難な平均文ではなく、あなたの作品の文章を書き始めます。この記事では、三幕構成・Save the Cat・ヒーローズジャーニーといった定番の構造理論を、2026 年の実際の AI(Claude / GPT / Gemini など)の能力に合わせて、初めての人でも使える形に落とし込みます。
Why structure first
01AI が得意なこと・人間が握ること
今の大規模言語モデルは、素材を出す・整える・別案を量産するのが非常に得意です。シーンの選択肢を 10 個出させる、ある段落を 3 つの文体で書き分けさせる、長い原稿の矛盾を洗い出させる——こうした作業は数十秒で返ってきます。一方で、「この物語で何を伝えたいか(テーマ)」「読者のどの感情を動かすか」「最後の一行をどう着地させるか」は、放っておくと AI が勝手に“それっぽい平均値”へ寄せてしまいます。ここは人間が握る領域です。
つまり役割分担はこうなります。人間=方向(テーマ・感情・最終判断)/ AI=量と速度(素材・整理・推敲補助)。この分担を最初に決めておくと、「AI に丸投げしたら凡庸になった」という典型的な失敗を避けられます。
FIG.1 人間が骨格と判断を握り、AI に素材生成を任せる往復のループ
02物語構造の三つの定番
「構造」とは、物語をどの順番で・どこに山場を置いて進めるかの設計図です。代表的な型を 3 つ押さえれば、たいていの企画は組めます。どれが正解というより、作品の性格で選びます。
三幕構成(もっとも汎用)
物語を「始まり・中間・結末」の 3 つに分け、配分の目安は第1幕 25%・第2幕 50%・第3幕 25%。第1幕で主人公と世界を見せて日常を崩し、第2幕で障害を積み上げてミッドポイント(中間点)で流れを反転させ、第3幕でクライマックスと解決へ向かいます。長編・短編・脚本のいずれにも効く、いちばん潰しの効く型です。
Save the Cat(三幕をより細かく)
脚本家ブレイク・スナイダーが多数のヒット作を分析してまとめた、15 のビート(要所)からなる型です。三幕構成の“中だるみしやすい第2幕”を、より細かな道しるべで管理できるのが利点。15 ビートは三幕に対応し、ビート1〜5 が第1幕、6〜12 が第2幕、13〜15 が第3幕に概ね収まります。代表的なビートには、世界を見せる「オープニング・イメージ」、事件が起きる「きっかけ(Catalyst)」、第2幕に入る「Break into Two」、すべてを失う「すべてを失って(All Is Lost)」、そして「フィナーレ」などがあります。「どこで何を起こすか」の地図が欲しいときに便利です。
ヒーローズジャーニー(神話的な旅)
神話学者ジョーゼフ・キャンベルが『千の顔をもつ英雄』(1949) で示した17 段階の英雄の旅を、クリストファー・ボグラーが実作者向けに『The Writer's Journey』(1992) で12 段階に整理し直したものが広く使われています。日常世界 → 冒険への誘い → 試練と仲間 → 最大の苦難 → 報酬 → 帰還、という流れで、ファンタジーや成長譚、RPG 的な物語に向きます。実務ではボグラーの 12 段階を骨組みとして使い、行き詰まったらキャンベルの 17 段階で“何の段階が足りないか”を診断する使い分けが定番です。



