マーケティング & 生成AI
チラシ作成、1週間が20分に
ウエインズトヨタ神奈川がAdobeの生成AIを導入し、販促チラシの制作を1週間から20分へ短縮した。現場の販促スピードが激変した好例——ただし凝ったブランド表現はまだ人の手が要る。
01 旧来のチラシ制作チェーン
自動車ディーラーにとって販促チラシは生命線だ。新型車の発売、期末の在庫一掃セール、点検キャンペーン——機会のたびに店舗ごとに異なる訴求内容のチラシが必要になる。だがその制作プロセスは、長らく時間と人手を大量に消費するものだった。
典型的なフローはこうだ。まず営業担当が訴求内容を固め、社内デザイナーまたは広告代理店に依頼する。デザイナーは素材(車両写真・スペック・価格・ロゴ)を収集し、レイアウトを起こす。初稿が上がれば、営業・マネージャー・コンプライアンス担当が確認し、修正指示を出す。修正ラウンドは平均2〜3回に及ぶことも珍しくない。
全体の所要期間は通常5〜7日。急ぎでも3日程度は必要だった。季節キャンペーンや週末セールのような短サイクルの施策では、チラシが完成する前に機会が過ぎてしまうケースすら起きていた。
02 Adobe Firefly + Express がウエインズで実現したこと
ウエインズトヨタ神奈川はAdobe Firefly と Adobe Express を組み合わせ、チラシ制作を1週間から20分へ短縮した。鍵はブランドキットとテンプレートの統合だ。
Adobe Express のブランドキット機能により、ウエインズのロゴ・指定フォント・カラーパレットがあらかじめシステムに登録されている。担当者は車両写真とキャッチコピーをテンプレートに流し込むだけで、ブランドガイドラインに準拠したチラシの初稿が数分で出来上がる。Fireflyの生成AI機能が背景の合成や画像補正を自動で処理するため、素材集めにかかっていた時間が大幅に削減された。
また、複数サイズへの自動リサイズ機能により、A4チラシ・SNS用正方形・横断幕サイズを一括生成できる。以前は各サイズを個別に再レイアウトしていたため、ここだけで半日分の作業が消えた。
03 販促チームはどう変わるか
制作時間が7日から20分になるとは、単に「同じ作業が速くなる」ことではない。販促の戦略そのものが変わりうる。
これまで「コストと時間の制約」から月2〜3本しか制作できなかったチラシを、週単位で複数本展開できるようになる。天気・在庫状況・競合動向に応じたリアルタイムの販促が現実になる。ウエインズの事例では、この販促頻度の増加が顧客接点を増やし、来店率の向上につながる期待がある。
一方で限界もある。AI生成テンプレートは「量産型の誠実な販促物」には強いが、ブランドの世界観を一から構築するようなコンセプチュアルな広告には向かない。新型車のブランドローンチキャンペーンや、感情に訴えるストーリーテリング広告は、引き続き人間のアートディレクションが不可欠だ。
恩恵を受けやすい業種は、高頻度・短サイクルの販促を必要とする分野だ。自動車ディーラー、家電量販店、飲食チェーン、不動産仲介など、週次・月次でのキャンペーン切り替えが常態化している業態はすぐにでも導入を検討する価値がある。
出典: ウエインズトヨタ神奈川・Adobe Japan 発表(2026年6月)/ AI Navigate 編集部取材