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アーティストが生成AIを嫌う理由は…

note / 3/14/2026

💬 OpinionSignals & Early TrendsIdeas & Deep Analysis

Key Points

  • アーティストが生成AIの普及に対して創作の主導権と作者性を守るべきだという懸念を伝える
  • 著作権・報酬・クレジットの不確実性がAI生成物への抵抗感の主因として挙げられる
  • 作品の独自性とAI生成物との境界が不明瞭になり得る点を問題視している
  • 倫理・データセットの偏り・訓練データの出どころの透明性が課題として指摘されている
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アーティストが生成AIを嫌う理由は…

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こちらの論文は、プロの視覚芸術家が自身の職場や仕事の現場で生成AIとどう向き合い、どのように交渉し、どのような影響を受けているのかを調べたものになります。

視覚芸術家に限らず、生成AIがアーティストに与える悪影響は様々なところで指摘されていますが、今回の研究では特に「職場」「雇用」「クライアントとの関係」「キャリアの継続」に焦点を当てています。


研究の方法

著者らは、378人のプロの視覚芸術家を対象に、調査票による調査を実施しています。対象者の条件は、自分をプロの視覚芸術家と認識している、または視覚芸術の制作によって何らかの収入を得たことがある人となっています。

調査は主に回答を選択する形式の質問で構成され、必要に応じて自由記述欄が付いていました。
質問は、大きく以下の5つの領域に分かれています。

  • 生成AIの利用状況

  • 生成AIに対する一般的な態度・認識

  • 職場における生成AIに関連した経験

  • 生成AIがキャリアに与えた影響

  • 属性情報(収入、居住地域、学歴、社会経験、社会的アイデンティティなど)

回答者の募集はイベント、信頼できるアーティスト経由、SNS・オンラインコミュニティなど複数経路で行われ、うち343名についてはポートフォリオ等による実績の確認も実施されています。

調査期間は2025年10月から2026年1月で、自由記述の内容はアフィニティ・ダイアグラムで整理されました。

【補足:アフィニティ・ダイアグラムとは】
アフィニティ・ダイアグラム(親和図法)は、バラバラの状態にある大量のアイデアやデータを、共通のテーマや「親和性」に基づいてグループ分けし、整理・統合するための手法です。
ブレインストーミングの後の情報の整理に使われることがあります。

結果

1. 生成AIに対する、強い嫌悪感

Figure 1:視覚芸術家の生成AIに対する考え方
Jiang, H. H., Taylor, J., & Agnew, W. (2026). How professional visual artists are negotiating generative AI in the workplace.

回答者の85%が仕事で生成AIをまったく使わない、88%が画像生成AIをまったく使わないと回答しました。
一方、AI生成の画像には日常的にさらされており、回答者の45%が毎日、25%が毎週遭遇していると回答しています。
さらに、生成AIに対する態度は非常に厳しく、回答者の99%が否定的、92%が強い嫌悪を示したと報告されています。

この結果のポイントは、使っていない=関係がないというわけではない点です。論文では、クライアントが持ち込んだAI生成画像を起点に仕事を進めざるを得なかったケースが紹介されています。
また、画像生成AIは避けつつも、会議の文字起こしやマーケティング用のキーワード探しのような周辺業務では、生成AIを限定的に使う例もありました。

2. 外部からの圧力

Figure 2:視覚芸術家の仕事と生成AIの関連
Jiang, H. H., Taylor, J., & Agnew, W. (2026). How professional visual artists are negotiating generative AI in the workplace.

上司やクライアントの生成AIに関する態度は、中立、推奨、非推奨がほぼ均等に分かれる結果となりました。納期に関しては65%が変化なしとしつつも、変化があった場合はほとんどが短期化で、33%の回答者がより短い納期への変更を経験したと報告されています。

自由記述では、著作権、品質、評判や信用、秘密保持やデータ保護の観点から生成AIを嫌う発注者もいたようですが、企業内で雇用されているケースでは、効率化を理由に生成AIの利用を強く勧められるケースがあり、「この会社で将来を望むなら生成AIを受け入れろ」といった圧力があったとも語られています。

3. キャリアへの深刻な影響

Figure 3:キャリアへの影響
Jiang, H. H., Taylor, J., & Agnew, W. (2026). How professional visual artists are negotiating generative AI in the workplace.

回答者の80%が画像生成AIと競合していると感じ54%が収入減少75%が雇用の安定や顧客の定着の悪化90%が案件などの収入機会の減少を感じていました。
さらに、キャリアの成長への影響は77%が否定的将来のキャリアの見通しは61%が否定的キャリアの持続可能性は74%が否定的でした。

自由記述では、解雇、離職の検討、若手の離脱、創作意欲の低下が語られており、それに加え「AIを使っていないこと」を証明する負担についても触れられていました。
自分の作品がAIによる生成であると疑われないよう、制作過程を録画して証拠を残す人までいたと報告されています。

4. 交渉力の低下

Figure 4:雇用・労働に関する変化
Jiang, H. H., Taylor, J., & Agnew, W. (2026). How professional visual artists are negotiating generative AI in the workplace.

回答者の61%が、過去3年間に雇用面や事業における混乱を経験し、57%が個人単位の交渉力の低下を感じていました。

これは、生成AIが単に仕事の一部を置き換えるかどうかの話ではなく、働く側が条件交渉しにくくなっていることを意味します。「生成AIでできるのだから、もっと短時間でできるはず」「誰でも代替可能だから報酬は抑えられる」といった見方が広がっている可能性があります。

注意点

  • 参加者の多くはアメリカ、ヨーロッパ、カナダ在住で、調査は英語で行われています。

  • 「職場への影響」を扱う調査であるため、否定的で強い意見が集まりやすかった可能性もあります。


生成AIを使わないと、評価されなくなる?

こちらの記事は、GoogleがAIツールの活用状況を社内人事評価制度「GRAD(Googler Reviews and Development)」の考慮すべき事項に組み込んだという内容です。

記事によると…

Googleのマネージャーらは、一部の非技術系スタッフに対して日常業務へのAIの活用を求め、その活用状況を人事評価に反映させると伝え始めているようです。具体的には、文書の作成や営業関連の通話の分析にAIを使うよう奨励されており、一部では非公式な週次使用目標まで設定されているとされています。

このような動きはGoogleに限った話ではありません。
以下のような大企業でも、類似した動きが生じています。

  • Meta社:2026年の人事評価から「AI-driven impact(AIによる成果)」を全従業員の評価基準に設定すると通知した

  • Microsoft社:幹部が従業員に「AIの利用はもはや任意ではない」と伝達した

  • Accenture社:AI活用を昇進要件に結びつける社内メモがリークされる

  • Amazon社:「Clarity」という社内システムで従業員のAIツールの使用頻度を追跡すると発表

記事によると、2025年9月の調査では、対象1,295社のうち58%がAIツールの使用を義務付けているという結果も出ているようです。

AIを使うことを強制することによるリスク

上の記事では、リスク面も指摘されています。
具体的には、AIの活用を評価に組み込むことで、「ツールを開いただけで使ったことにする」「AIの出力をそのままコピーする」といった、形式的な利用が増えるのではないかという指摘が挙がっています。加えて、MITスローン経営大学院の研究者は、認知的なタスクをAIに委ねすぎることで人間が本来持つスキルが徐々に失われるリスクがあることを警告しています。

つまり、生成AIを「単に使っている」ことと「有効に使いこなしている」ことは別物であり、強制されたからとりあえず使っているという状況になるとリスクが先行する可能性がある、ということです。

調剤薬局でも生成AIを活用することはできますが、言うまでもなく、単にChatGPT等の生成AIをダウンロード・インストールして使ってみただけでは、使いこなしているとは言えません。
AIツールを使いこなすということは、以下のようなAIリテラシーを身につけた上で、AIツールの強みを最大限活かせる使い方をすることを指します。

  • AIの仕組みと限界を理解する

  • 目的に合うツールを選択して活用できる

  • 出力を批判的に評価できる

  • 安全面・倫理面に配慮できる

AIリテラシーは、患者さんの安全を担保しつつ調剤薬局の業務効率化を進めるにあたって、あると便利な知識ではなく、必要不可欠な知識になっていると言えます。
「使っているふり」でも「まったく触れない」でもなく、薬剤師としての判断力を保ちながらAIと協働できる薬剤師が、これからの時代に求められる姿になるかもしれません。

肖像権や著作権の議論だけでなく

今回の論文の内容を踏まえると、アーティストは「自分の仕事と競合する可能性があるために生成AIを嫌っている」という単純な話ではなく、周りの環境からの同調圧力やAIを活用することが前提の納期の短縮、さらには自分の作品がAI生成画像と疑われてしまうような環境において苦悩していることが示唆されました。

芸術作品と生成AIに関しては、主に肖像権や著作権などの問題について議論されている印象がありますが、アーティストが置かれている現場の環境にも配慮した議論をしていかないと、本質的な解決には至らないと考えられます。

そしてもちろん、生成AIで画像生成をする側の私たちも注意しなければなりません。
例えば、最近リリースされたNano Banana 2は、従来のNano Bananaよりさらに現実的な画像を生成することができるようになりましたが、それゆえに今まで以上に他人の肖像権や著作権には気を配る必要があります。

また、こちらが明確に指示をしなくても、実在する場所や公的機関の名称が画像の中に出現することも増えました。
ゆえに、まるで厚生労働省が正式発表しているかのような画像や、実在する場所で架空のイベントが開催されているかのような画像が意図せず生成されてしまう可能性があります。

生成物を何らかの形で公開する場合は、その画像に問題がないかを隅々まで確認してから公開するようにしましょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Webサイト「薬剤師のためのAIノート」も、是非ご覧ください。

記事に関する内容以外のお問い合わせは、以下のフォームよりお願いいたします。

また、書籍「超知能時代の調剤薬局」発売中です。
Kindle Unlimited会員の方は無料で読むことができます。


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