もうすぐ4月です。新人が入社する季節になりました。新人を受け入れると、現場の社員から「当たり前のことが伝わらない」「注意しても同じことを繰り返す」といった意見がいつの時代も出てきます。
実際に現場の社員からしたら、「最近の若者は常識がない」と言いたくなる場面もあるでしょう。厳しく「今の若者は想像力が欠如している」と表現する人もいます。
特に製造業や建設業の現場で新人教育をしていると、必ず出てくる疑問があります。それは「新人はなぜ、5Sが理解できないのか」です。「5S」とは、現場での安全衛生の基本的な考え方で、「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ」を指します。製造業や建設業であれば「5S活動」に取り組むのが当たり前になっています。ところが最近の新入社員は「5S」の要素を説明してもピンとこないケースがあるようです。
5S活動の要素は一般的なものに見えます。なぜ、若者はピンとこないのでしょうか。冷静に考えてみると、今の若者と中堅・ベテランの社員では「前提」に大きな違いがあるのではないかと思います。
その前提とは「社会人になるまでの体験の差」です。
「こんなの常識だ」は経験がないから通じない
例えば1970年代生まれと2000年代生まれで、社会人になるまでの経験を考えてみましょう。
1970年代生まれは子どもの頃、致命的なまでではありませんが「危険な体験」が意外と身近にありました。公園の遊具に乱暴な乗り方をして落下しそうになる、学校の工作の授業で大人用の工具を使って指を切る、サイズの合わない自転車に乗って転びそうになる――といった具合です。今度は大人になると、アルバイトで清掃などを担当する、といった経験もあるでしょう。
遊具から落下しそうになる、といった経験は職場であればヒヤリハットです。幼少期から様々な体験を通じて、社会に出る前に会社で学ぶことの「プレ学習」をしていたと思います。「汚い場所は危ない」、「整理されていない場所は事故につながる」、「次に使う人のことを考える」など、5Sの基本となる感覚は、生活の中で身に付いていたのです。
ところが現在はどうでしょう。危険はできるだけ排除され、安全が徹底される世の中になっています。公園もかなり安全を重視して、少しでも危険のある遊具は撤去されてしまいました。アルバイトも、接客やオンライン業務が増えたり、高齢者や外国人の労働者がアルバイトをするようになったりと、掃除や整理整頓といった業務を学生が担当する機会は減っています。
その結果、今の新人は危険な環境や不衛生な環境の体験が圧倒的に減っているのではないかと思います。新人の指導を担当する社員が経験してきたことと、新人が経験してきたことは、大きく異なるのです。
この前提を理解せずに「5Sは当たり前だ」「こんなの常識だ」「仕事以前の生活習慣がなぜできないのか」と言っても、教育はうまくいきません。新人にとっては「当たり前ではない」からです。
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