富士通は2026年4月23日、フィジカルAI(人工知能)のOSを2026年から順次実証展開していくことを発表した。併せて、これらの実現に向けて、Carnegie Mellon University(以下、カーネギーメロン大学)と提携し「Fujitsu-Carnegie Mellon Physical AI Research Center」を設立したことも発表している。
フィジカルAIのOSを開発
フィジカルAI(Physical AI)は、ロボットや自動運転車などが現実世界(物理世界)で活動するために必要な知見を学習し、物理法則を理解した上で複雑なシナリオを生成、実行するAIを指す。これらを実現することで、例えば、ロボットなどが環境に合わせて自律的に他のロボットや人と協調して作業や業務が行えるようになるとされている。
富士通ではフィジカルAIを重点領域の1つと位置付けているが、このフィジカルAIのOS(Operating System)の開発に乗り出す。データ主権を確保したソブリン環境において、多様なロボットを協調させるロボットと空間のOSを提供することを目指す。
富士通 富士通研究所 フィジカルAI研究所長の鈴木源太氏は「フィジカルAIのOSについてロボットに関する競争は激しいが、富士通はそちらだけでなく空間を制御する知能領域に取り組んでいるのが特徴だ。空間を賢くするアプローチで差別化していきたい」と考えを述べている。
「Fujitsu Kozuchi Physical OS」の概要
フィジカルAI基盤「Fujitsu Kozuchi Physical OS」は、ロボット、センサー、システム、空間を統合し、過去の行動経験や人の模倣をもとにロボットのタスクへの適応力を高める行動知能と、ロボットが活動できる実環境の情報を提供する空間知能の両面で協調を可能とすることを目指している。
これらを実現するため、要素技術である「業務特化型Takane」「ロボットタスク生成」「異種ロボット協調制御」「ロボットRAG」「分散メモリ」「強化学習」「模倣学習」「Sim2Real」「空間ワールドモデル」「社会物理シミュレーション」「アフォーダンス生成」「マルチモーダルセンシング」などの開発を進める。
これらの開発を実現するために、カーネギーメロン大学と提携し、Fujitsu-Carnegie Mellon Physical AI Research Centerを設立した。同センターは、ペンシルベニア州ピッツバーグのHazelwood Greenに位置する延床面積約1万4000平方メートルの施設だ。基礎研究と商用展開をつなぐ役割を担い、フィジカルAIを実環境で検証するための専門的な設備と共同研究スペースを活用し、実環境での検証や応用研究を加速する。この新たな研究拠点で、富士通とカーネギーメロン大学で、ロボティクス、AI、言語理解、人とロボットの相互作用、システム設計、社会インフラへの適用、倫理や社会受容などの多岐にわたる領域で共同研究や実証を進める。
この提携を生かし、富士通ではフィジカルAIのOSを2026年から順次展開する計画だ。2026年度中に「Fujitsu Kozuchi Physical OS v1」として、業務を理解し空間単位でロボットを制御するOSをリリースする。2027年度にはロボットスキルを容易に拡張できる「v2」、2028年度には、自己進化型のロボット協調空間を実現する「v3」、2030年度には、異なる現場や空間でつながり効果を広げられる「v4」をリリースする計画だ。
鈴木氏は「2026年度中にOSを公開し、SDK(Software Development Kit)を使えるようにする。とにかくまずは使える形で世に出して、フィードバックを集める」と語っている。
関連記事
生産性100倍に、富士通がソフトウェア開発をAIエージェントで自動化する開発基盤
富士通は、ソフトウェア開発の全工程をAIエージェントが自動化する「AI-Driven Software Development Platform」を開発した。実証では、3人月を要したソフト改修作業を4時間に短縮し、生産性を100倍に向上できた。
富士通が自律型AIエージェントで小売業界へ、2030年度売上2000億円市場を狙う
富士通は、自律型AIエージェントを核に小売現場の課題を解決する新ソリューション「Uvance for Retail」を発表した。「リテールテックJAPAN 2026」で披露した同製品のデモンストレーションの様子も紹介する。
「日本の製造業が再び勝つために」、富士通が進める次世代国産CPUとAI戦略
富士通は技術戦略説明会において、製造現場へのAI導入課題を解決する次世代CPU「MONAKA」や1ビット量子化技術について説明した。会場では、研究開発の成果として空間モデル技術のデモンストレーションを披露した。
フィジカルAI実現へ、NVIDIAと富士通がチップからサービスまでAIインフラで協業
富士通とNVIDIAは、AIエージェントを統合したフルスタックAIインフラストラクチャの構築を目指し、戦略的協業を拡大する。フィジカルAI領域や量子コンピューティング領域を重点領域とし、共同でAIコンピューティング基盤の開発や、ユースケースの創出などに取り組む。
富士通が語るAIエージェント戦略、“足の小指を打たない”データ活用の在り方とは
富士通は「Fujitsu Uvance Update」として、クロスインダストリーで社会課題解決に貢献する事業モデルである「Uvance」の進捗状況について説明し、事例などを紹介した。
プレゼン資料をAIが読み込み、自動で説明する技術を開発
富士通は、AIアバターがPowerPointの資料を読み込み、自動でプレゼンテーションを実施して質疑応答に対応する技術を開発した。設定したAIアバターを介して音声でインタラクティブな質疑応答ができる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
富士通 富士通研究所 フィジカルAI研究所長の鈴木源太氏







