ERP(統合基幹業務システム)最大手であるSAPジャパンのトップが6年ぶりに交代した。常務執行役員最高事業責任者を務めていた堀川嘉朗氏が2026年4月1日付で社長に昇格した。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型ERPやAI(人工知能)関連の新製品を日本市場でどう広げていくのか。堀川社長に今後の事業戦略を聞いた。(聞き手は島田 優子=日経クロステック/日経コンピュータ副編集長、中島 募=日経クロステック/日経コンピュータ)
ここ数年、AI関連のツールやサービスを相次ぎ投入しています。日本のユーザー企業からの手応えは。
2026年5月に米国で開催する年次カンファレンスにおいて、様々な業務プロセスで利用できるAIエージェントを発表する予定です。具体的には経理・財務や調達といった業務別と、製造や流通など業種別のAIエージェントがそれぞれ登場します。多くのAIエージェントを、顧客企業がすぐに利用できる形で提供していきます。
社長就任の挨拶回りをするなかで、顧客企業のAIへの関心が非常に高まっていると感じています。でも古いERPを使い続けていると、AIをはじめとした最新機能を最大限に活用するのは難しい。ソフトウエアのバージョンアップやクラウド化といった対応が必要になります。
私が強調したいのは、ERPが「業務システムの構築手段」ではなく「AI活用に欠かせないデータ基盤」だということです。ERPでは企業の経営実態を示すデータが日々生み出されています。
現代の企業経営では、いかに正しいデータを取得して経営判断に反映できるかが大切です。ERPをAI活用のためのデータ基盤と捉えると、「会計だけ」など限定的な範囲ではなく幅広い業務で導入するほうが得策と言えます。
主力製品の「SAP S/4HANA」にはパブリッククラウド版とプライベートクラウド版があります。ユーザー企業はどのように使い分けるとよいでしょうか。
我々はパブリッククラウド版を「第1の選択肢」として顧客に提示しています。理由は明確です。パブリッククラウド版は他の提供形態に比べ、AIのような新機能を実装するスピードが圧倒的に速いのです。パブリッククラウド版を選択してもらうことを念頭に、導入方法論やツールなどを整備しています。
既に業務プロセスの記述やテストの自動化を支援するツールを用意してあります。ERPの導入プロジェクトは多くの場合、テストフェーズが全工程の4~5割を占めています。人手の作業はどうしてもミスが起こりやすいもの。そこを自動化できれば大きなインパクトがあります。
パブリッククラウド版を選択すると、年2回のアップデートが発生します。テストの自動化ツールを利用すれば、ソフトのバージョンアップに関するテストの工数も減らせます。我々はAIをこういった領域でも活用していきます。
次のページ
S/4HANAのプライベートクラウド版も継続提供...この記事は有料会員限定です



