AIで脆弱性発掘の速度と費用は劇的に変化、Google傘下のWizが警鐘

日経XTECH / 2026/5/15

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要点

  • AI活用によりサイバー攻撃は「脆弱性探索」「攻撃面探索」「攻撃経路探索」の各段階で高速化し、ゼロデイ発掘の速度とコストが劇的に変化している。
  • ブラックマーケットでのゼロデイ脆弱性(RCE)の価格が約3億円から約1億円へ下がった例が示され、AIによる探索精度向上と供給過多が背景にある。
  • パッチ解析の自動化が進み、パッチ公開後も数日〜数時間で攻撃が可能になり、企業が実質的に「ほぼゼロデイ攻撃」のリスクを負いやすくなっている。
  • AIで侵入後の重要情報窃取に要する時間は平均6分とされ、人手中心の対応(数カ月)に比べ大幅に短縮され、防御側はメカニカルな対応が必要になる。
  • Wizはクラウド/アプリ/SaaS横断のデータ関係をグラフで可視化し、コンテキストを武器にする方針で、レッド(模索)/ブルー(分析)/グリーン(修復ガイダンス)の3つのAIエージェント提供を開始している。

 「攻撃者がAI(人工知能)を活用するなら、防御側もAIを使わなければ防御は成し得ない」。2026年5月12日、ホワイトハッカーでもある東京大学先端科学技術研究センターの西尾素己客員研究員は、セキュリティー企業米Wiz(ウィズ)の日本法人Wiz Cloud Japan(ウィズ・クラウド・ジャパン)が開催した記者説明会の場でそう話した。

 Wizは、2026年3月に米Google(グーグル)が約5兆円を投じた買収の完了を発表した新興のセキュリティー企業だ。

 西尾客員研究員は、AIによって変わるサイバー攻撃を大きく「脆弱性探索」、「攻撃面探索」、「攻撃経路探索」の3つに分けて説明する。2026年4月に米Anthropic(アンソロピック)が発表したAIモデル「Claude Mythos(クロード・ミュトス)」は、脆弱性探索の精度の高さで大きなインパクトを生んでいる。

東京大学先端科学技術研究センターの西尾素己客員研究員。AIによってサイバー攻撃は大きく3つの点で変わっていると説明した
東京大学先端科学技術研究センターの西尾素己客員研究員。AIによってサイバー攻撃は大きく3つの点で変わっていると説明した
(写真:日経クロステック)
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 Mythosに代表されるAIによる脆弱性探索の進行は、未知の脆弱性(ゼロデイ脆弱性)の発掘速度を加速するとともに、そこにかかるコストを下げる。西尾客員研究員によると、ブラックマーケット上で3億円程度の値が付いていたゼロデイ脆弱性によるRCE(リモートコード実行)は「現在は3分の1の1億円程度に下がっている」という。AIによって容易にゼロデイの脆弱性が発見できるようになり、供給過多の状態が生まれているためだ。

 また、攻撃者によるAI活用によって発見された脆弱性への対策のためにベンダーなどから公開・提供されるパッチファイルの解析にも広がっている。これにより逆説的に、パッチが提供されていないバージョンにどのような脆弱性があるのかが瞬時に判明。「パッチが公開されたとしても、数日ないし数時間以内の攻撃が可能となり、一般企業もほぼゼロデイの攻撃を受ける危険性が高まっている」(西尾客員研究員)とする。

 AIによるスピード向上は、脆弱性探索のフェーズにとどまらない。発見した脆弱性を利用したシステムへの侵入から、その先のより価値のある情報の探索までも、高速で自動化できるようになっている。

 「AIを悪用した攻撃者がシステムに侵入後、重要情報を窃取するのにかかる時間は平均6分」(西尾客員研究員)だといい、人手によるハッキングで数カ月要していた脆弱性発見から情報の取得に至る一連の行為を、数分のうちに完了させられる。この速度に対応するためには防御側も「メカニカルに対応する必要が出てきた」(同)。

Wizは3つのAIエージェントで防御

 Wizもリスクを同様に捉え、自社サービスへのAIエージェントの組み込みを進めている。同社のサービスの核は、クラウドインフラやアプリケーション、SaaSにまたがるデータの関係性をグラフ構造で表現し、可視化することにある。

 コードから運用までの各レイヤーを横断するプラットフォーム上で様々なデジタルアセットをグラフ構造で関連付け、相関関係を分析することで、セキュリティーリスクをコンテキストとして把握し、優先順位を付けて対処できるのが特徴だ。Wiz Cloud Japanの桂田祥吾プリンシパルカスタマーエンジニアは、その特徴がAI時代のセキュリティー防御策に生きると話す。「コンテキストはAI活用 の前提となる。攻撃者よりも防御側が豊富にコンテキストを把握できれば優位に立てる」

Wiz Cloud Japanの桂田祥吾プリンシパルカスタマーエンジニア。防御側がAI活用の前提となるコンテキストを豊富に持っていることが優位点と話す
Wiz Cloud Japanの桂田祥吾プリンシパルカスタマーエンジニア。防御側がAI活用の前提となるコンテキストを豊富に持っていることが優位点と話す
(写真:日経クロステック)
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 Wizは2026年3月から、プラットフォーム上の攻撃を模索する「レッド」、攻撃や脆弱性を分析する「ブルー」、修復のガイダンスを担う「グリーン」の3つのセキュリティーAIエージェントを内包する機能の提供を始めた。豊富なデータから得られるコンテキストに基づいた迅速なセキュリティー対策の実現を目指す。

Wizのプラットフォームに内包する3つのセキュリティーAIエージェント。異なる役割を持ち自律的にタスクをこなす
Wizのプラットフォームに内包する3つのセキュリティーAIエージェント。異なる役割を持ち自律的にタスクをこなす
(出所:Wiz Cloud Japan)
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 Googleは、Google Cloudのセキュリティー関連サービスにも同機能を組み合わせる方針を明らかにしている。

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