今回は、「知識創造理論の内面化」を取り上げます。内面化とは、形式知を暗黙知に変換することです。加えて、価値創造を拡大するための課題についても考察したいと思います。
知識創造理論には、(1)共同化(2)表出化(3)連結化(4)内面化──の4つのプロセスがあります。人間と人工知能(AI)の協力という観点から知識創造のプロセスをまとめたものが次の図です。
(1)の共同化は、人間の暗黙知を人工知能の暗黙知とすることです。行動を見て学ぶ方法を採ります。モデルは世界モデルと呼ばれます。
(2)の表出化は、人間の暗黙知を形式知に変換することです。設計レビューの支援や作業手順書の作成が代表的な応用例となります。
(3)の連結化は、形式知を組み合わせて、整理することです。知識の構造化によって概念の体系化を行います。技術的には知識グラフや因果推論が使われます。
そして、(4)の内面化は、形式知を暗黙知に変換することです。形式知は共同化、表出化、連結化のプロセスを通して得られた知識であり、組織内において共有される知識です。例えば、マニュアルや標準化された作業手順などが挙げられます。
暗黙知に変換するとは、個人の中の暗黙知として知識を利用できるようにするということです。書籍『知識創造企業』(東洋経済新報社)の中で内面化として取り上げられたのは、書類やマニュアル、物語(ストーリー)などに言語化された形式知を暗黙知へと転換することです。
つまり、文書化された形式知に従って組織の構成員が実際に行動することにより、体験を内面化し、暗黙知として定着させるのです。文書やマニュアルは形式知の移転を助けます。ある人の経験を他の人に追体験させるということです。
人工知能との関わり
企業においても、大規模言語モデル(LLM)を用いて文書やマニュアルを生成させることが行われています。ある知識に基づく行動をとった経験がない人でも、生成された文書やマニュアルを見ながら実行できるということです。
個人が暗黙知として利用できるようになるということは、最初はマニュアルを見ながら1ステップずつ実行していたとしても、それを繰り返すことで、特に意識しなくても必要な行動をとれるということになります。
次のページ
対象とする知識の複雑さこの記事は会員登録で続きをご覧いただけます


