防衛大手ラインメタル登壇、兵器にもソフト定義 ハノーバーメッセ注目講演

日経XTECH / 2026/4/17

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要点

  • ラインメタルのCEOがHM2026の基調講演に登壇し、欧州で防衛システムを製造できる基盤拡大と同地域企業との連携強化を訴える見通しだ。
  • 同社はイタリア(Leonardoとの合弁)で戦車納入を2026年1月から開始し、さらに後半にはオランダ企業と迎撃ミサイル等の合弁を設立するなど、生産体制の拡張を進める。
  • 兵器の「ソフトウエア定義(Software Defined Defense, SDD)」として、ARX Roboticsが地上走行車両向けOS「Mithra OS」やUGV自律化・群制御に関する講演を行う可能性がある。
  • HM2026の主題は製造現場のAIで、会期初日のテーマは「産業用AI(Industrial AI)」となり、政財界トップやSiemens、SAP、ドイツテレコム等が特別講演に参加する。
  • ドイツの国策デジタル基盤「Deutschland-Stack」の一環として、ドイツテレコムがNVIDIAと構築する産業用AI向けクラウド「AIファクトリー」が、学習・運用用データセンターとして位置づけられている。
2026年のハノーバーメッセでは、基調講演などを新たに設けた「センターステージ」に集約した(出所:Deutsche Messe)
2026年のハノーバーメッセでは、基調講演などを新たに設けた「センターステージ」に集約した(出所:Deutsche Messe)
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 世界最大級の産業展示会「HANNOVER MESSE 2026(ハノーバーメッセ)」(2026年4月20~24日、以下、HM26)に、ドイツ防衛最大手のRheinmetall(ラインメタル)が基調講演に登壇する。初めて「防衛生産エリア(Defense Production Area)」の展示を設置することもあり、同分野の講演は手厚い。

 4月21日に、ラインメタルCEO(最高経営責任者)のArmin Papperger(アーミン・パッペルガー)氏が壇上に立つ。パッペルガー氏は「欧州で最新の防衛システムの製造基盤を拡大しなければならない」と語っており、欧州圏内の防衛企業との連携を強めている。

 ラインメタルがイタリア防衛大手Leonardo(レオナルド)と立ち上げた合弁会社は、2026年1月からイタリア陸軍向けに戦車の納入を始めた。同年後半にも、ラインメタルはオランダの防衛企業とミサイルなど迎撃システムに関する合弁会社を設立する。パッペルガー氏の講演では、ロシアのウクライナ侵略を引き合いに、防衛機器の製造体制における基盤強化について話すと見られる。

 また、兵器のソフトウエア定義(Software Defined Defense、SDD)の講演もありそうだ。ラインメタルのパッペルガー氏と共に、ドイツ防衛系スタートアップであるARX Robotics(ARXロボティクス)CEOのMarc Wietfeld(マーク・ヴィートフェルト)氏も登壇する。ARXロボティクスはウクライナで無人地上車両(Unmanned Ground Vehicle、UGV)大規模受注の実績を持ち、「Mithra OS」という地上走行車両向けOS(基本ソフト)を展開する。ドローンやUGVの自律化と群制御に向けて、SDDに関する講演が見込まれる。

UGVはウクライナで運用されている(出所:ARX Robotics)
UGVはウクライナで運用されている(出所:ARX Robotics)
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シーメンスやSAPがドイツ首相と登壇、「ソブリンクラウド」鍵に

 HM2026の主題が製造現場にあることは変わりない。会期初日の4月20日のテーマは「産業用AI(人工知能)」(Industrial AI)だ。特別講演と題して、ドイツのFriedrich Merz(フリードリヒ・メルツ)首相ほか、Siemens(シーメンス)CEOのRoland Busch(ローランド・ブッシュ)氏やSAPでCEOを務めるChristian Klein(クリスチャン・クライン)氏、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)CEOのTimotheus Hottges氏ら、ドイツ大手企業のトップが登壇する。

 背景に、ドイツが国策として進めるデジタル基盤「Deutschland-Stack(ドイツ・スタック)」がある。いわゆるデータを国内で管理・保守する「ソブリンクラウド」をはじめ、産業のデジタル基盤をドイツ国内や欧州内に置く取り組みだ。

 ドイツ・スタックの一環として、ドイツテレコムは米NVIDIA(エヌビディア)と、産業用AI専用として欧州最大級のクラウド基盤「AIファクトリー」を構築した。ロボットや製造業向けの大規模計算やデータ合成、フィジカルAIなどAIモデルの学習や運用に使うデータセンターである。

AIファクトリーは2026年から、ドイツ・ミュンヘンで稼働し始めた(出所:Deutsche Telekom)
AIファクトリーは2026年から、ドイツ・ミュンヘンで稼働し始めた(出所:Deutsche Telekom)
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 2026年からドイツ・ミュンヘンにてSAPと協力して運用を開始しており、ドイツテレコムがデータセンターを、SAPがAIアプリケーションの提供を担う。シーメンスも、高精度シミュレーションによるデジタルツインや工場向けのエージェントAIなどの運用を、このソブリンクラウドに移行させている。

 産業用AIの物理的なインフラからソフトウエアまでカバーする体制は、今後も拡大する。AIファクトリーは分散配置を前提としており、2028年までに段階的に拡充して「AIギガファクトリー」とする。HM26の特別講演で、既に始まっているソブリンクラウドの取り組みと、今後の拡大について紹介する可能性は高い。

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