まるで外商? 三越伊勢丹がECで強化する「パーソナライズAI」 効果は?

ITmedia AI+ / 2026/4/27

💬 オピニオンIdeas & Deep AnalysisIndustry & Market Moves

要点

  • 三越伊勢丹はEC強化の一環としてLTV向上を狙い、パーソナライズAI機能で個客(個人)に深くつながる体験を志向している。
  • これまでのECの「過去購入に基づく単純なレコメンド」を超え、ワイン・旅行・ペットなど趣味嗜好を自社データとして学習し、より質の高い提案を目指す。
  • 百貨店の強みである「外商」のように、年間購入額の大きい顧客を個別にフォローする接客体験を、EC上でも再現しようとしている。
  • 導入後の効果としてCTRが1.4倍、カート追加率が1.4倍、CVRが1.3倍と報告され、AI単体ではなく自社の強みとの「掛け算」で独自価値を生むと説明している。

本記事の内容は、RX Japan(東京都中央区)が4月8~10日に開催した「Japan DX Week」内で実施されたセミナー「三越伊勢丹が挑む『個客業』 ~店舗×EC×AIで実現する次世代リテールDX~」の内容を要約したもの。


 三越伊勢丹がECを強化している。LTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)が高い顧客を増やすことが狙いで、強化施策の一つにパーソナライズAI機能がある。

 多くのECサイトでは、顧客の過去の買い物履歴から、関連商品をおすすめする設計を採用している。しかし、提案されるおすすめ情報は「トップスを買った人に、また同じようなデザインのトップスをすすめる」といった範囲にとどまり、個人の好みや生活パターンに合わせた情報発信は難しいのが現状だ。

 同社が重視するのは、単なるおすすめにとどまらない、百貨店の強みを生かしたパーソナライズ機能の提供だ。百貨店の強みの一つに「外商」がある。年間の購入金額が多い顧客に対し、個別にフォローするサービスで、同社はEC上の買い物でも、この外商のような接客体験を実現しようとしている。

isetan 三越伊勢丹が強化するパーソナライズAI機能とは?(提供:ゲッティイメージズ)

まるで外商? 個人の嗜好を理解したAI、導入後の成果は?

 三越伊勢丹は、店舗に人を集めて商品を販売する「館業」(やかたぎょう)から、一人一人の顧客と深くつながる「個客業」への転換を経営戦略として掲げている。その一つがECに搭載したパーソナライズAI機能だ。

 「ランドセルを買った人にランドセルをすすめる」といったこれまでの単純なアルゴリズムを打破。「ワインが好き」「旅行が好き」「ペットを飼っている」といった個人の趣味嗜好(しこう)を「三越伊勢丹にしかないデータ」として蓄積。AIに学習させ、より質の高い提案の実現を目指す。

 同社オンラインストアグループ EC運営部の今村毅氏によると、パーソナライズAI導入後、CTR(クリック率)は1.4倍、カート追加率は1.4倍、CVR(成約率)は1.3倍となった。

 今村氏は「AIは掛け算の技術」だと話す。「AI単体ではなく、自社の強みとAIの掛け算で、独自の価値を生む」(今村氏)。これまで培ってきた自社の強みをAIで強化するという考え方が、三越伊勢丹が目指す新しい経営戦略を支えているようだ。

関連記事

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

続きを読むには、コメントの利用規約に同意し「アイティメディアID」および「ITmedia ビジネスオンライン通信」の登録が必要です