黒パグのAIショートショート ⑦ #しろくま文芸部
お題 眠れない
こんにちは黒パグです。みなさんは#しろくま文芸部をご存知ですか?
毎週秀逸なお題で様々な方が参加するものなのですがどの作品も読み応えがあって、マジでスキ制限にすぐ引っ掛かります。
表題の通り今日は黒パグ文芸部の一環として誠に勝手ながらコラボして書こうと思います。
しろくま文芸部については検索するかのリンクから飛んでください!

では、本文です。
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眠れない
眠れない、と男は思った。
時計の数字が変わるのを三回見た。男はAIに訊いた。眠れない。原因を出せ。
AIは四秒で答えた。
光。
温度。
カフェイン。
ストレス。
男は遮光カーテンを閉め、エアコンを二度下げ、コーヒーカップを流しに置き、深呼吸を八回した。
布団に入った。
天井を見た。
眠れなかった。
男はもう一度AIに訊いた。まだ眠れない。別の原因を出せ。
AIは三秒で答えた。前回より一秒早かった。
枕の高さ。
湿度。
呼吸のリズム。
入眠前の思考パターン。
男はタオルを枕の下に敷き、加湿器をつけ、四秒吸って八秒吐く呼吸を繰り返し、何も考えないようにした。何も考えないようにすることについて考えた。
布団に入った。
天井を見た。
眠れなかった。
三度目の診断結果は八項目だった。四度目は十三項目だった。五度目は、男がスクロールを止められないほど長かった。
リストの末尾に到達するころには、最初の項目を忘れていた。男は最初に戻った。戻ったころには末尾を忘れていた。
男は対策を始めた。
寝室の照度を〇・五ルクス以下にした。マットレスの硬度を変えた。夕食の時刻を九十分早めた。入浴の温度を一度上げた。就寝前のストレッチを十二分おこなった。左向きに寝た。右向きに寝た。仰向けに戻った。
すべて終えたとき、時計は午前三時を過ぎていた。
机の上にコップがあった。
水を飲むと眠りやすくなる、と最初に言ったのはAIだった。二度目の診断だったか、三度目だったか、男は覚えていなかった。男は水を注いだ。飲んだ。コップを置いた。
六度目の診断を求めた。AIは一秒で答えた。
リストは二十一項目あった。男はそのうち十九項目をすでに実行済みだった。残りの二項目を実行するために、男は布団から出た。
アロマオイルをディフューザーに入れた。ラベンダー。AIが指定した濃度の通りに希釈した。寝室の磁北を確認し、枕の向きを十五度ずらした。
布団に入った。
ラベンダーの匂いを嗅いだ。
天井を見た。
眠れなかった。
七度目の診断を求めた。
AIは即座に答えた。今度は応答時間が表示されなかった。もともと表示されていたのかどうかも、男にはわからなくなっていた。
リストは三十四項目だった。
男は読み始めた。対策Aを実行し、結果を記録し、再診断を要求し、新しいリストを受け取り、対策Bを実行し、結果を記録し、再診断を要求した。
ループは正確に回った。男もAIも、一度も間違えなかった。
コップに手を伸ばした。空だった。男は台所に行き、水を注ぎ、飲み、また注いだ。何杯目かは、もう数えていなかった。コップを机に戻した。対策Cに取りかかった。
窓の外が白んだ。
男はまだ対策Hの途中だった。
八度目のリストを開いたとき、男はあることに気づいた。リストの最初の項目が「睡眠不足」だった。
男は画面を見た。
AIは正しかった。男は睡眠が不足していた。なぜなら、眠れなかったからだ。なぜ眠れなかったかというと、眠れない原因を特定するために起きていたからだ。
男はコップに手を伸ばした。空だった。さっき飲んだばかりだった。
男は九度目の診断を求めなかった。求めなかったが、AIはすでに回答を生成していた。男が求めるより前に、パターンを学習していたからだ。
リストが画面に表示された。男は読んだ。読みながら、対策を実行した。実行しながら、次のリストを待った。
男は、もう眠ろうとしていなかった。
* * *
眠れない原因の特定:完了。原因:眠れないと判定するロジック。なお、当該ロジックは正常稼働中である。

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