時系列基盤モデル(Time Series Foundation Model、TSFM)が流行の兆しを見せている。「NeurIPS」や「KDD」といった有力学会がワークショップを開催したり、米ビッグテックを中心とした開発元がモデルを相次ぎ発表したりするなど、世界のフロントランナーたちが熱い視線を送っている。最新動向を追った。
「フロンティアモデル(最先端の基盤モデルの総称)は素晴らしい。進化を続けており、できる限り活用すべきだ。ただ、フロンティアモデルには特定ドメインの学習が足らず、現実で直面する課題の解決には不十分だと個人的に考えている。(中略)モデルの専門性を高め、現実の課題やデータを捉え、解決策を講じることが重要だ」――。
こう主張するのは、米Datadog(データドッグ)でAI(人工知能)研究組織のトップを務めるAmeet Talwalkar(アミート・タルウォルカー)チーフサイエンティストだ。タルウォルカー氏は、深層学習のトップカンファレンス「NeurIPS 2025」で開催された時系列基盤モデルに関するワークショップの招待講演に登壇した。
大量のデータを事前学習させた大規模なニューラルネットワーク「基盤モデル」の有用性は広く知られている。タルウォルカー氏の言葉にあるように、近年では業界や用途に特化した「Vertical AI(バーチカルAI)」向けのモデルを重要視する声が強まっている。
Vertical AIの1つとして注目されているのが時系列基盤モデルだ。気温や交通状況など、一定周期で計測した「時系列データ」を大量に学習させた基盤モデルを指す。2023年ごろから、米Google(グーグル)や米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)といったビッグテックの研究開発組織を中心に発表が相次いでいる。著名な国際学会でも論文の出稿が増えている。
時系列基盤モデルの主な用途は、過去のデータから次の時間帯のデータを予測する「時系列予測」だ。ユースケースは幅広い。商品の需要予測、株価の変動予測、IoT(インターネット・オブ・シングズ)機器やバイタルデータの異常検知など、時間とともに変化し得るデータなら全て関係する。
時系列予測は以前から研究されてきた領域だが、予測に先立ち、独自のモデルを構築する必要があった。基盤モデルを活用すれば、ドメイン固有の追加学習をしなくても予測ができる「ゼロショット予測」が可能になる。さらに大量のデータを事前学習すれば、より高精度な予測ができるとされる。従来手法との違いや精度の詳細は、第2回で説明する。
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