半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスは短期記憶に使うDRAMの大容量化や低電力化につながる技術を開発した。基本素子に酸化物半導体と呼ぶ材料を使い、素子を3次元方向に積層して記憶容量を増やす。漏れ電流を小さくでき消費電力も減る。韓国Samsung Electronics(サムスン電子)や中国半導体大手も同様の技術を開発中で、AI(人工知能)向けメモリーの次の主戦場となりそうだ。
キオクシアは2025年12月6~10日に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催される国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting) 2025」で詳細を発表する。液晶パネル材料としても知られる酸化物半導体IGZO(InGaZnO)を使う。製造コストを低減しやすい3次元積層技術を開発し、IGZOトランジスタを8層積層した構造で良好な特性を得た。
酸化物半導体を使う次世代メモリーを研究する東京大学教授の小林正治氏は「動作時電流が大きく、リーク(漏れ)電流は小さい優れたトランジスタ特性が得られているようだ。信頼性に関するデータが示されるかに注目したい」と話す。
酸化物半導体はDRAMの微細化の限界を突破する手段として脚光を浴びている。現行のDRAMはトランジスタのチャネル(電流が流れる領域)の形成にシリコン基板を使う。次世代DRAMはシリコン基板への成膜でチャネルを造り、チャネルを垂直に立てたりトランジスタを3次元積層したりできるようにする。酸化物半導体は比較的低温で成膜した際の電気的特性に優れ、高速で漏れ電流の小さいトランジスタを実現できるため、この用途に適する。
キオクシアは長期記憶に使うNAND型フラッシュメモリーの専業だが、2030年代の事業化を視野に次世代DRAMを開発している。「NANDで培った記憶素子の3次元積層技術を生かす」(キオクシア幹部)ことで、DRAMが微細化限界を迎え3次元へ移行するタイミングでの市場参入を狙う。ここに利用するのが酸化物半導体だ。
2024年のIEDMでは中堅DRAMメーカーの台湾・南亜科技(Nanya Technology)と共同で、酸化物半導体を使うDRAM「OCTRAM(オクトラム)」を発表した。トランジスタのチャネルを垂直に立てる構造を導入し、現行のDRAMと比べて1ビット当たりのチップ面積を縮小できることを示した。今回のIEDMでは量産を見据えた方法でトランジスタを3次元積層して動作を確かめ、3次元DRAMへの道筋をつけた。
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中国CXMTも酸化物半導体を活用この記事は有料会員限定です


