あらゆる産業の製品に活用されるレアアース。中でも、レアアース(希土類)市場価値の9割を占めるネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)の4種類を用いてできるのがレアアース磁石またはネオジム磁石だ。
日本発イノベーションの代表製品とも言えるネオジム磁石は、いまやスマートフォン、電気自動車(EV)、風力発電、データセンターインフラなど、幅広い製品に活用されている。ただし、昨今の地政学リスクを踏まえると、今後ネオジム磁石の争奪戦が発生する可能性を否定できない。
一方、需給逼迫を背景に、競争力を有する日本のネオジム磁石関連企業(信越化学工業やプロテリアル、製造装置のアルバックなど)には、大きな事業機会が生まれる可能性がある。
本連載ではネオジム磁石のサプライチェーン(供給網)における課題を整理し、その後、日系プレーヤーにとっての事業機会を考察する。連載第1回となる今回は、ネオジム磁石の重要性について解説する。
カーボンニュートラルやAIを支える隠れたコア製品
レアアースは17種類あるが、前述のようにNd、Pr、Dy、Tbの4種類だけでレアアース市場価値の約90%を占める。この4種類を用いてできるのがレアアース磁石またはネオジム磁石である。
ネオジム磁石は1982年、住友特殊金属(現プロテリアル)の佐川眞人氏によって発明された。これ以前には、強力な磁石としてサマリウム-コバルト合金が存在したが普及せず、改良を重ねて安価になったネオジム磁石が広く使われるようになった。まさに日本発のイノベーションを体現するような製品だ。
ネオジム磁石は、電気自動車のモーターや洋上風力発電のタービン、スマートフォンなどに活用されていることは、世の中でも比較的よく知られている。しかし、AI(人工知能)普及を支えるデータセンターにもたくさんのネオジム磁石が活用されていることを把握している人は少ないのではないか。
例えば、データセンターの冷却に欠かせないチラーや冷却塔、液冷システムには多くのコンプレッサーやファンが搭載されており、それらのモーターのローター(回転子)にはネオジム磁石が使われている。
他にも航空宇宙・防衛産業向けの各種製品にもネオジム磁石は広く利用されている。具体的には潜水艦の推進・操舵モーター、航空機・無人機のプロペラやレーダーのアクチュエーター、ロケット・衛星のアクチュエーターなどである。このようにネオジム磁石は多種多様な成長産業を支えている、まさに見えない心臓部と言える。





