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日立製作所(以下、日立)と日立エナジーは2026年3月24日、エネルギーインフラ設備寿命の延長や運用効率の向上、系統信頼性の強化を支援するAIサービス・ソリューション群「HMAX Energy」の提供開始を発表した。
送配電網が直面する「3つの壁」
送配電設備は現在、3つの構造的な壁に直面している。
- 需要の急増: 電化の進行やAI需要の拡大、データセンター建設ラッシュなどによって電力消費が急増している
- 設備の老朽化: 送配電設備の中には設計時の想定寿命を超過しているものも多い
- サプライチェーンの逼迫(ひっぱく): 新規設備を調達しようとしても供給が追い付かない
こうした「3つの壁」を受けて、送配電網を高度化するニーズが高まると同時に、既存の送電線設備の稼働率を高め、寿命を延ばす重要性も増している。
こうした課題に対応するため、日立と日立エナジーが提供するのがHMAX Energyだ。電力会社や再生可能エネルギー事業者、データセンターといったエネルギーバリューチェーン全体を対象とする。日立が先端AIを軸に社会インフラ分野のDXを進める戦略的な取り組み「Lumada 3.0」を体現するソリューション群「HMAX by Hitachi」の一環として位置付けられている。エナジーやモビリティ、産業分野などにわたって展開する。
設備を「守り・延ばす」仕組み
HMAX Energyの提供内容は「Plan(計画)」「Predict(予測)」「Prevent(予防)」の3本柱で構成される。開閉装置や変圧器などの単体機器や変電所、長距離・大容量送電を担う高圧直流送電(HVDC)システムなどを対象に、顧客の技術選択に対応したモジュール型で提供される。
「Plan(計画)」では、AIが分析したデータに基づき、運用・保全部門の意思決定と計画立案を後押しする。「Predict(予測)」では、接続された設備と環境データから摩耗の初期兆候を検出し、異常な挙動を通知する。「Prevent(予防)」では、定期点検とAIで強化した性能シミュレーションモデルを現場の専門チームが活用し、設備の残存寿命を引き延ばす。
変圧器故障を50%低減、修理コストを最大75%削減
HMAX Energyは不具合による緊急対応や高額な修理を未然に防止することで、変圧器故障に起因する収益損失を最大60%削減できるとしている。早期検知により変圧器故障を50%低減し、修理コストを最大75%削減することも可能だという。
HMAX Energyは現場で実証された技術を基盤としている。その一例が、HVDCシステム向けデジタルツイン製品「IdentiQ」だ。現実の設備をデジタル空間に再現するデジタルツイン技術によって、インシデント対応時間を最大90%短縮できるとしている。
海底HVDC連系線の一つであるバルティック・ケーブルでもIdentiQが採用されている。設備情報や運用データ、分析結果を一つの画面にまとめて可視化することで、システムの健全性やライフサイクル、将来の状態変化をリアルタイムで把握できる環境を整備した。
イタリアの再生可能エネルギー事業者であるERGは、デジタル化によってハイブリッド開閉装置を遠隔監視する体制を構築し、現場点検に費やす時間を35%削減した。日立は、老朽化する電力設備をAIで「延命」しながら運用効率を高めるHMAX Energyのアプローチは、再生エネルギー事業者にも広く応用できる可能性があるとしている。
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